人類が生まれるための12の偶然 (岩波ジュニア新書 626) の感想

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参照データ

タイトル人類が生まれるための12の偶然 (岩波ジュニア新書 626)
発売日販売日未定
製作者眞 淳平
販売元岩波書店
JANコード9784005006267
カテゴリジャンル別 » 科学・テクノロジー » 宇宙学・天文学 » 一般

購入者の感想

「ジュニア新書」と銘打っているが、極めてレベルの高い科学読み物となっている。
 今から約137億年前に宇宙が生まれた(らしい)。そして46億年前に地球が誕生した(らしい)。その地球上に人類が誕生したのは、今から400万~700万年前のことである(らしい)。
 しかしそこに至る道のりは決して平坦なものではなかった。そもそもこの広い宇宙の中で生命が確認されている惑星は地球のみであり、それだけでも生命の誕生がいかにまれな出来事だったかがうかがえる。
 では人類が生まれるためには、どのような「偶然」が必要だったのだろうか。著者はそれを大きく以下の12個に分けている。「1. 宇宙を決定する自然定数が、現在の値になったこと」「2. 太陽の大きさが大きすぎなかったこと」「3. 太陽からの距離が適切なものだったこと」「4. 木星、土星という二つの巨大惑星があったこと」「5. 月という衛星が地球のそばをまわっていたこと」「6. 地球が適切な大きさであったこと」「7. 二酸化炭素を必要に応じて減らす仕組みがあったこと」「8. 地磁気が存在していたこと」「9. オゾン層が誕生したこと」「10. 地球に豊富な液体の水が存在したこと」「11. 生物の大絶滅が起きたこと」「12. 定住と農業を始める時期に、温暖で安定した気候となったこと」。天文学、化学、物理学、地質学、生物学、考古学、等々、ありとあらゆる分野の知識を総動員して語られる人類誕生の歴史は壮大であり、著者の博識には舌を巻くほかない。
 これらのどれか一つでも欠けていたら、人類の誕生はありえなかったという。そう聞いて、若い読者はどう思うのだろうか。「人類が誕生したこと自体が奇跡なのだから、その人類が戦争をしているなんて愚かなことだ」と平和主義者になるのだろうか。「こんな奇跡が起こるなんてありえない。神様が存在しているとしか考えられない」と宗教に目覚めるのだろうか。あるいは「いま自分がこうして存在していることの僥倖を自覚して、もっと心の広い人間になろう」という謙虚な気持ちになるのだろうか。
 しかしもはや若くはない自分は、そのような素直な感想を持つことができなかった。読みながら終始つきまとった疑問は、次のようなものである。「それらは果たして偶然といえるのだろうか」

 ビッグバンによる宇宙創成から、太陽系の成立、地球の誕生、生命がうまれ、我々人類が成立し、こうして自分自身や宇宙の起源について思いをめぐらすに至るまでには、どんな偶然が必要であったか、12にまとめている本。スケールは大きいが、丁寧にわかりやすく整理している。
 ここまで読んでどんな結論が導かれるだろうか。我々人類はそれこそ神に祝福された至高の存在なのだろうか。そうではなく、本書はわれわれが、「偶然」によって生まれた、特別な存在ではないことを教えてくれる。
 我々は謙虚でなければならない。「環境を守ろう」などという言い方はいやらしい。「われわれにとって都合のいい今の環境を守ろう」が正しいのだ。今まで「偶然」によって我々は存在できたが、これからはわからない。我々の存在を「必然」たらしめることができるかどうか、我々の知恵が問われているのだ。
 

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