夜間飛行 (光文社古典新訳文庫) の感想

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参照データ

タイトル夜間飛行 (光文社古典新訳文庫)
発売日2010-07-08
製作者アントワーヌ・ド サン=テグジュペリ
販売元光文社
JANコード9784334752071
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » フランス文学

購入者の感想

新潮文庫の堀口大學訳の「夜間飛行」もいいですが現代ではやはりその訳文のいいまわしはと
ても古くさくちょっと読みづらい感じがあります。
それに比べこの光文社の新訳はとても読みやすい上に物語の持つ詩的な部分もそのまま表現
されておりとても美しいです。
新潮文庫か光文社古典新訳文庫のどちらを薦めるかとなると私はこの光文社の方をお薦めしま
す。

物語も静かな地上と暴風雨の空との状況の対比という構成がすばらしくまるで映画を見ている
よう。
この本の解説にも書いてありましたが後半はほぼリアルタイムで物語が進みグイグイと引き込ま
れて一気に読めてしまいます。まるで自分もその現場にいるような臨場感で読むことを途中で止
めることができません。

サン=テグジュペリといえば「星の王子さま」が有名ですが作品としてはこの「夜間飛行」の方も
もっと多くの人たちに読まれるべき作品だと思いました。

『夜間飛行』(1931年)は、サン=テグジュペリが、黎明期の航空郵便事業の輸送機のパイロットだった経験を題材とし、わずか31歳で出版したもので、文庫本で100ページ少々の小品だが、20世紀文学の傑作としての風格を備えている。では、この小説の優れた特徴とはなにか? 一つは、全編にみなぎる詩情の非凡な美しさで、もう一つは、主人公リヴィエールの冷酷なまでに厳格な人物造形だ。そして、これら相反するような二つの特徴を両立させている点が、本書の最大の特徴となっている。

フランスには、パスカルの『パンセ』の箴言「人間は考える葦である」を典型とし、比喩を駆使して、物事の本質を詩的に思索する伝統があるように思われる。サン=テグジュペリも、パイロットの経験を積むなかで、そういう思索を重ねており、それを本書のなかで思う存分吐露したかのようだ。さらに、本書の献辞が、リヴィエールのモデルでフランス民間航空の生みの親、かつ、ギヨメなどの初期の優秀なパイロットを鉄の規則で鍛え上げたというディディエ・ドーラに捧げられた事実からすれば、詩人的資質の持ち主のサン=テグジュペリと、優秀な職業人との出会いが、この名作の誕生を決定づけたと想像される。

読者は、夜間飛行時の上空の“魔と美の別世界”の詩情に酔いしれ、その一方で、機体の故障や悪天候が死に結びつく過酷な現実に緊張感を強いられながら、厳粛なラストまで読み進むことになる。しかし、極めて美しく思索的な作品だから、急がずに、一語一語を味わうように読んでほしい。本物の文学による感動という大きな見返りがあるはずだ。ところで、読者の間で、訳文が話題になっているようなので、冒頭の一節をここに例示しよう。

<堀口大學訳>; 「機体の下に見える小山の群れが、早くも暮れ方の金いろの光の中に、陰影の航跡を深めつつあった。平野が輝かしくなってきた。しかもいつまでも衰えない輝きだ。この国にあっては、冬が過ぎてから、雪がいつまでも平野に消え残ると同じく、平野に夕暮の金いろがいつまでも消え残るならわしだ。」(新潮文庫)
<山崎庸一郎訳>;

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