峠 (上巻) (新潮文庫) の感想

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参照データ

タイトル峠 (上巻) (新潮文庫)
発売日販売日未定
製作者司馬 遼太郎
販売元新潮社
JANコード9784101152400
カテゴリ »  » ジャンル別 » 文学・評論

購入者の感想

「河合継之助のような人間を持ったことははたして藩にとって幸か不幸か・・・」
作中、登場人物達により幾度も繰り返される問いである。
継之助はその卓越した頭脳と行動力により日本随一の砲兵団を作り上げ、それにより長岡藩という小藩をして一個の独立国にすることを夢見た。
しかし結果として、継之助ひきいる長岡藩は維新史上最も激烈な戦いとなる北越戦争へと突入してゆくことになる。

司馬さんは短編『英雄児』において、継之助の英雄ぶりとともに、このような英雄を持った小藩の不幸を描いた。
そして3年後、同じ河合継之助を主人公にし、全く別の視点、「武士」というものに焦点をあてた長編を発表した。
それがこの『峠』である。
継之助は福沢諭吉に劣らぬ開明論者で封建制の崩壊を誰よりも見通していながら、諭吉とはまったく違う道を選ぶ(この2人の掛け合いは私の最も好きなシーンである)。
自分自身の原理原則、“志”に従った結果である。
継之助の志とは、「長岡藩士として藩をいかによくしてゆくか」ということであった。
人は立場の中で生きているという信条をもつ継之助にとって、彼の仕えるべき場所は長岡藩以外にあり得ないのである。
新時代の申し子のような諭吉と異なり、継之助は心の底からの「武士」だったのだ。
やがて時代の急流は瞬く間に国中をのみ込み、時勢は圧倒的に薩長につく。
長岡藩に対しひたすらな屈従を強い、一方的に軍資金の献上を命じる新政府軍に対し、継之助は中立の立場を貫くべく奔走するが、交渉は決裂。
悲しいまでに「武士」であった継之助に残された道は、ひとつしかなかった。
それは、自らの人生をかけて築き上げた長岡藩を自ら砕くこと。
彼は、たとえ全藩戦死し長岡の地が焦土と化そうとも、最後まで戦い抜くことを決意する。
薩長と長岡藩のいずれが正しいか、その判断は百年後の人々に委ねて――。
司馬さんはあとがきで次のように言っている。
「幕末期に完成した武士という人間像は、日本人がうみだした、多少奇形であるにしてもその結晶のみごとさにおいて人間の芸術品とまでいえるように思える」

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