浮浪児1945‐: 戦争が生んだ子供たち の感想

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参照データ

タイトル浮浪児1945‐: 戦争が生んだ子供たち
発売日販売日未定
製作者石井 光太
販売元新潮社
JANコード9784103054559
カテゴリ歴史・地理 » 日本史 » 一般 » 日本史一般

購入者の感想

漫画か小説だったか覚えてないが、空襲で親と離れ離れになった子が、流浪の果てにお金持ちの子と分かり、親切な大人に引き取られてめでたしめでたし……という、日本版「オリバー・ツイスト」みたいな作品を子どものころ読んだ覚えがある。日本神話のひとつ、貴種流離譚(生まれのいい子は途中で何があっても幸福になれる)ですね。

完全な錯覚なのですが、写真集でみる戦災孤児なども、まあ、このときは大変だったけれども、踏ん張りがよい経験になって、その後は幸福な人生を送ったのだろう……となんとなく思っていました。

が、そんなノーテンキな思い込みに一撃を食らわす一作でした。
ご両親もいて、裕福な家庭生活を送っていた子が一瞬で戦災孤児となる。東京大空襲のPTSDで火をつけまわる少女、飢えて盗みを繰り返すうちヤクザに身を預ける少年、自分だけ生き残ったという罪悪感からかごめんなさいと謝りながら餓死していった子、ひきとられた施設で心の安定になればと聖書を差し出したところ、最後の力を振り絞って聖書を窓から投げ捨てた子。空襲と親が目の前で死んだショックから精神を病んだ子。その後、犯罪に手を染め、死刑囚となってしまった人もいる。

死刑は執行される。戦災孤児だから、なんて誰も酌量してくれない。子供たちの心がすさむのは当たり前であり、あまりのことに身が震えました。
大藪晴彦の「野獣死すべし」も思い出しました。人があたりまえのように殺されていく戦争の現場を子供のころ見て、長じて殺人鬼になる青年の話です。

 話は飛びますが、今、アフリカの内戦やISで起こっていることを考えると、毎日のようにとことん傷づけられている子どもの心身は、もはやとりかえしのつかないところまで来ていると思います。
 この時期に大変な労苦を重ねて本書を出してくださった著者に心からの感謝と尊敬を捧げます。

 野坂昭如が自身の戦争体験を記したといわれる「火垂るの墓」を思い起こしながら本書を読み上げた。本書ほど東京大空襲から戦中、戦後の孤児問題を詳細に調べ上げたルポはないといわれている。孤児たちも高齢となり、著者は時間と競争しながら本書を書き終えている。

 先ずは、戦争は多くの名もない人間を極限の不幸に陥れるものであるが、最大の被害者が子供や女性であることがわかる。万博ごろまで、ターミナル駅には傷病軍人が白装束で座っていたことは記憶するが、浮浪児の記憶はない。私は、敗戦後、多くの孤児たちがこれほど悲惨な境遇にあったことは知りえなかったし、知ろうともしなかった。浮浪児は不良、きたない程度の概念でしかなかったし、「正常な孤児」は「施設」で暮らしているとの解釈すらしてきた。

 悲惨な空襲の中で親を失い、記憶さえ失われた子供たち、生きるために想像を超えた幼き人生を送った人々の体験は、正しく引き継がなくてはならない。だた、本書は生き延びた子供を中心に描かれ、空襲で肉体的、精神的に致命傷を受けた人たちの記録は少ない。これは、今まで生きながらえた弱者が奇跡的存在でもあり、多くは、混乱のなか、この世から見捨てられたためと想像できる。

 この少ない記録の一つとして、ある幼児が、空腹と飢餓のあまり犬の糞を食べ「ラーメンを食べたい」と死んでいったというという孤児仲間の話は涙を誘う。

 本書は東京大空襲の状況や戦中、戦後の戦災孤児、闇市、売春、暴力の横行なども克明にまとめ、多くの孤児院があたかも隣国の収容所のようであったことも伝えている。孤児院では配給食糧の横流しや管理者による暴力、強制的な労働も横行していたという。東京湾の人工島に設けられた施設から脱走し溺死した浮浪児の事例もある。

 国や社会は、彼らに生涯、安心して生活できる環境を与えるのは当然のことではあるが、戦後の物質的に満たされたという社会は彼らに十分なことをしてきたのであろうか。

戦争で家族も家庭も失った子供たちが、路頭で仲間たちの死に直面しながら、あがくように生きていく姿をリアルに描いた作品。その子供たちに大人がどう接したか。衝撃的なルポルタージュでした。過去を隠し続けた子供たちが、いまなぜ当時のことを語るのか。日本は敗戦という「ゼロ」から始まったことをしみじみと考えさせられました。

悲劇を生き残った人々だけを取り上げると、美談と楽観を産みがちです。このルポルタージュのすごさは死んでいった子供たちのことを正面から描いていることです。
12分前  いいね!

戦後の上野、浮浪児の写真を見るために、彼らはいったいどこにいったのだろうと思っていました。

この本の広告を新聞で見た瞬間に読むことを決定。

丹念な取材と資料の収集で、当時の浮浪児の実態とその後を教えてもらいました。特に心を揺さぶられたのは、浮浪児たちは、結婚し80歳を超えても、誰にも浮浪児だったことを告げていないのです。孤児であること、施設で育ったことは話せても、浮浪児だったことは話せない。なぜなのか。

 浅田次郎に「シューシャインボーイ」という話があり、しばらく前に西田敏行がテレビ主演したことがある。この本は、その時代背景を客観的にだが、とてもやさしい目で記録している。とても泣けるお話で、私たちの父母たちがどのように生きたのか、「誰も戦後を覚えていない」その時代、米軍に「解放」されて「民主主義を教えてもらい」「つらい戦争が終わり明るい戦後がやって来た」という戦後の「ストーリー」のなかで、何万人もの戦災孤児たちが上野に集まっていたことは、今もその名残をそこに行けば感じることが出来る。
 特攻隊や1945年東京大ホロコースト等・・こういう子供たちを出したくない、と思い日本人は闘ったのだと思う。「永遠の0」の主人公は、自分の子供がこうなることを恐れていたのだと思う。同じく「蛍の墓」を読む場合等にも、この本が有れば時代背景を良く理解出来る
 飢えと寒さで次々と死んで行く子供たち。著者の言うように、このような歴史は今後もまだまだ発掘整理されなければならないはずだ。

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