平和主義とは何か - 政治哲学で考える戦争と平和 (中公新書) の感想

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参照データ

タイトル平和主義とは何か - 政治哲学で考える戦争と平和 (中公新書)
発売日販売日未定
製作者松元 雅和
販売元中央公論新社
JANコード9784121022073
カテゴリ » ジャンル別 » 人文・思想 » 哲学・思想

購入者の感想

「説得力のある平和主義のあり方を探る」(はしがき)という本書の狙いは必ずしも成功していないように感じました。
その理由はいくつかあります。

1 非暴力の義務論的根拠(2章)について、刑法理論から正当防衛のみを援用しているのは恣意的です。緊急避難の法理を無視しているため、二重帰責ケースの結論がおかしくなっています。また、戦争に関与した個人の責任を国内刑法で評価するのはそもそもおかしいですが、かりに思考実験としてみても、どの国でもおそらく正当防衛ではなく正当行為・法令行為として無罪になるでしょう。

2 帰結主義(3章)について、防衛費と社会保障費を対比し、戦争死と貧困死を財政的トレードオフのように語るのですが、戦争に負けた状況において平時水準の社会保障を行い得ると考えているのでしょうか。リアリティがなさすぎです。著者はおそらく、戦争というのは統治階層が入れ替わる、あるいは国家領域の一部の帰属が移行するだけで市民経済社会は従前のまま継続されるようにイメージしておられるのでしょうが、そんなことはあり得ません。

3 著者は「条件付平和主義」と「正戦論/現実主義」を対置させるのですが、どちらも暴力の使用は条件付きで認められるという点において同じ穴のムジナです。ですから、4〜5章での正戦論や現実主義に対する批判は条件付平和主義に戻ってくるブーメランになっています。

4 条件付平和主義を論証するには、そこでいう条件の具体的内容を示さなければ話が始まりませんが、著者は「いかなる状況において、いかなる要件があれば、条件付平和主義がいうところの条件を満たしたことになるか」について自分の考えを明確にしません。自分の立場を曖昧にしたまま他の立場を論難するのは簡単なことですが、生産的ではありません。

5 著者は、外国の侵略に対しては市民的防衛で立ち上がるべきといいます(166頁)。これが著者の本音でしょうし、それはそれで一つの見識だと思いますが、それは著者が最初に排除したはずの宗教的・絶対的な平和主義と紙一重と言わざるをえません。


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