「国史」の誕生 ミカドの国の歴史学 (講談社学術文庫) の感想
参照データ
タイトル | 「国史」の誕生 ミカドの国の歴史学 (講談社学術文庫) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 関 幸彦 |
販売元 | 講談社 |
JANコード | 9784062922470 |
カテゴリ | 歴史・地理 » 日本史 » 一般 » 日本史一般 |
購入者の感想
タイトルから、戦前の皇国史観の変遷の様なものが書かれてあるのかと想像したが、本書が扱っているのはそうしたものの前史的部分。始めの半分程は、西洋の歴史学から刺激を受けた日本の歴史研究が、朱子学的な道徳的教訓を主眼とする従来のものから考証学、実証学的なものへと転換し、徐々に近代的合理性を獲得する過程を描いている。中盤になってようやっと本題らしきものに入り、様々なコンプレックスを抱えた脱亜入欧の流れが始め(著者の表現を借りれば)文明=万国主義を志向し、その成果のひとつとして見出された封建制と云う日本の中世(著者の専門は元々中世史)の存在が、「日本にも西洋並みの歴史が有る」と云う自覚を促し、それがやがて「脱欧入亜」なる文化=内国主義に転じると云う逆転現象を描いている。詰まり「西洋に追い付け、西洋を輸入しろ!」から「日本も西洋並みだよな!」、そしてそれが「西洋を追い越せ、日本を輸出しろ!」に至るまでの一連の流れを追っている。著者のヴィジョンがはっきりしているので読み易い。
分量がそれ程無いので取り上げられている事件や論文等の数もやや少なく、些か食らい付きが足りない部分も有るが、明治期の新たなる復古主義によって天皇制ナショナリズムが拡大再生産され、大正・昭和期の国体史観が生まれる土壌が用意されるまでの日本のアカデミズムの動きを大体辿ることが出来る。元本の初版は1994年だが、今読んでも十分に面白い。
分量がそれ程無いので取り上げられている事件や論文等の数もやや少なく、些か食らい付きが足りない部分も有るが、明治期の新たなる復古主義によって天皇制ナショナリズムが拡大再生産され、大正・昭和期の国体史観が生まれる土壌が用意されるまでの日本のアカデミズムの動きを大体辿ることが出来る。元本の初版は1994年だが、今読んでも十分に面白い。