説経節を読む (岩波現代文庫) の感想

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タイトル説経節を読む (岩波現代文庫)
発売日販売日未定
製作者水上 勉
販売元岩波書店
JANコード9784006021214
カテゴリ »  » ジャンル別 » 文学・評論

購入者の感想

 森鴎外の「山椒大夫」では、安寿は、弟厨子王を追ってから逃れさせようとして、履物を揃え入水自殺する。「これが鴎外の思ったもっとも美しい女性の姿だった」と中学生の時、授業で聞かされた。女とは、そして美とはそのようなものであるのかと僕は思った。それからだいぶたって、もとの説教節では安寿は追っ手に捕らえられ八つ裂きの目にあうのだということを知り、驚くとともに妙に納得させられた。僕は、文豪の楚々とした女性像は、知識人がでっちあげた近代的なフィクションでありインチキであると思った。

安寿の行く末については説教節にもいろいろなヴァージョンがあり、八つ裂きにされる話もあれば、自害する話もあり、また、生き延びて厨子王との再会をはたす話もある、とこの本で教えられた。どちらが本流なのか分からないけれど、水上勉は、それよりも村の聴衆のノリで変幻自在と化する説教節の自由を好ましく思っているようだ。そう考えると、鴎外の「山椒大夫」も長い読み替え・変奏の歴史のひとこまとして興味深い小説と言えるのかも知れない。

中山の国分寺に隠れ追ってをかわした厨子王は、足腰が弱って歩けない。朱雀七村の足や腕のない童、盲い、両親のそろわぬ童が「育み申さん」と歌いながら厨子王を天王寺(このトポスの有意味性についても一再ならず言及がある)まで土車(つちぐるま)に乗せて送る。著者は「いま、読みかえしても頬がぬれてくる」と言い「まこと曇天の雲が割れ、ひと筋の陽光がさしのべたような解放感を味わわしめる」と。僕も、この箇所を読んで中世的なものの迫力ある美しさを想像するけれども、ここも鴎外は割愛してしまった。

私はいわゆる「◯◯を読む」というタイトルの本を読むのは本意ではないのですが、
説経節の本文を原文のママ読むのはかなりしんどいのでかえって真に理解できません。
こうした解説本もうまく使うのも研究のコツなのでしょうね。

この本は単なる解説というレベルでもなく、筆者が子供の頃に語り聞いた記憶なども
交えて語られていますの、原文よりも凄みが増します。
これで理解できたら、また原文に戻って読み直せば良いのですよね。

説経節は東洋文庫で読めますので、原文に当たりたい方はそちらを是非どうぞ。

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