うらおもて人生録 (新潮文庫) の感想
参照データ
タイトル | うらおもて人生録 (新潮文庫) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 色川 武大 |
販売元 | 新潮社 |
JANコード | 9784101270029 |
カテゴリ | 文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 » あ行の著者 |
購入者の感想
ホームドラマのモチーフで「やもめのおじさん」というのが昔はよくありましたね。
「男はつらいよ」の「寅さん」なんかはその典型です。
たとえば、一人の少年が、学校で挫折し、親兄弟から白い目で見られ、世間の人はみな自分よりえらく見え、顧みて自分がずいぶん惨めに見える、そんな屈託を抱いているとき、「やもめのおじさん」は登場します。「おじさん」はたいてい、少年に向かって、「あのさ〜」から始まって「ま、こんなこといってる俺だってざまぁないんだけどさ」で終わる、叱責とも慰めともつかぬ言葉をかけてくれる――
平成という世相のせいか、こういうホームドラマは少なくなりましたね。またあっても、「あのさ」と声をかけてくれるおじさんは出てこなくなりました。この本の本質は、そんな「あのさ」と声をかけてくれる「おじさん」の情緒であるといっていいでしょう。それを愛というのかやさしさというのかは知りませんが、社会が今それをなくしているのなら、社会はもっとそれを惜しむべきでしょう。
青少年向けに書かれた文章ですから、そういった世代の人たちに読んでもらいたいのはもちろんですが、大人たちこそ一読し「ま、こんなこといってる俺だってざまぁないんだけどさ」という目線で話ができる人間のえらさというのを、いまあらためて実感すべきではないかなという気がします。
「男はつらいよ」の「寅さん」なんかはその典型です。
たとえば、一人の少年が、学校で挫折し、親兄弟から白い目で見られ、世間の人はみな自分よりえらく見え、顧みて自分がずいぶん惨めに見える、そんな屈託を抱いているとき、「やもめのおじさん」は登場します。「おじさん」はたいてい、少年に向かって、「あのさ〜」から始まって「ま、こんなこといってる俺だってざまぁないんだけどさ」で終わる、叱責とも慰めともつかぬ言葉をかけてくれる――
平成という世相のせいか、こういうホームドラマは少なくなりましたね。またあっても、「あのさ」と声をかけてくれるおじさんは出てこなくなりました。この本の本質は、そんな「あのさ」と声をかけてくれる「おじさん」の情緒であるといっていいでしょう。それを愛というのかやさしさというのかは知りませんが、社会が今それをなくしているのなら、社会はもっとそれを惜しむべきでしょう。
青少年向けに書かれた文章ですから、そういった世代の人たちに読んでもらいたいのはもちろんですが、大人たちこそ一読し「ま、こんなこといってる俺だってざまぁないんだけどさ」という目線で話ができる人間のえらさというのを、いまあらためて実感すべきではないかなという気がします。