知への意志 (性の歴史) の感想

アマゾンで購入する

参照データ

タイトル知への意志 (性の歴史)
発売日販売日未定
製作者ミシェル・フーコー
販売元新潮社
JANコード9784105067045
カテゴリ人文・思想 » 哲学・思想 » 西洋思想 » 西洋哲学入門

購入者の感想

 ミシェル・フーコー、性の歴史三部作第一巻、「知への意志」。本文は200ページ強、読み込もうと思えば一日で出来そうなサイズで、内容も刃が立たないほど高度に抽象的ではないが、語られているアイディアは濃密で、読み手に考えさせること、気付かせることの多い著作だと思う。「監獄の誕生」と共に、現代社会を論ずる多くの著作家に引用される頻度の高い1冊でもある。

 冒頭に19世紀のヴィクトリア朝的モラルに触れ、抑圧される性という像を映し出した後、この著作全体でその像を反転させようと宣言し、後の章では、カトリックが聴聞僧への罪の告白を制度化したこと、そこで性にまつわる事柄が微に入り細を穿つほどの告白を求められたこと、やがて告白は文学の領域へ、そして精神分析の領域へと拡大していったこと、告白という仕組みは各個人に内面の観照を促すことで自己を点検・保守・管理させる自己統治の装置として機能したことや、性に関する知識が科学の姿を仮装したこと、一般に流布されている抑圧される性の4つの側面、女性のヒステリーへの対処・子供の性の管理・人口調整の対象としての夫婦間の性の管理・同性愛などの異常性欲を精神医学の対象とすること、をそれぞれ取り上げて、その一つ一つについて歴史的脈絡を明らかにする作業や、権力を考慮する際に、すでに構築された法・社会制度を自明の前提にするのではなく、日常の生活での対人関係上の力の流れ方、相互に欲望を介在した力関係の働き方から権力を捉え直し、法や社会制度はその結果であると考える見方などを各章に配置し、第五章の中ほどで性に関する言説秩序や言説実践は何のために、誰が用意し、作り出し、流通させ、消費させ、生産させ、効果を発揮していくのかが明らかにされる。そこに至るまでのフーコーの手管は、読み終わった後ではまるで探偵小説の書き手のように見える。

 人を編み上げていく権力装置の重要な一部、と著者が呼ぶ「性的欲望」の見取り図として、読み手に与える印象が非常に強い1冊だと思う。

あなたの感想と評価

コメント欄

関連商品の価格と中古

知への意志 (性の歴史)

アマゾンで購入する
新潮社から発売されたミシェル・フーコーの知への意志 (性の歴史)(JAN:9784105067045)の感想と評価
2017 - copyright© みんこみゅ - アマゾン商品の感想と評価 all rights reserved.