古池に蛙は飛びこんだか (中公文庫) の感想

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参照データ

タイトル古池に蛙は飛びこんだか (中公文庫)
発売日2013-09-21
製作者長谷川 櫂
販売元中央公論新社
JANコード9784122058378
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 詩歌 » 和歌・俳諧

購入者の感想

    古池や蛙(かはず)飛(とび)こむ水のおと 

 古来、芭蕉・俳句を代表する名句になっている。しかし、この句のどこがいいのか、明解に説明できる人は少ないだろう。本書はこの句の詠まんとしたものを執拗に追究して、たどりえた新見解を示している。よく似たことを言っている論者はもちろんあるが、表面きって「古池に蛙は飛びこんだか」と提示し、その答えは「蛙が水に飛びこむ音を聞いて心の中に古池の幻が浮かんだ」にすぎない。はっきり言って「古池に蛙は飛びこまなかった」のである。この極端な見解を避けて「古池がある」「蛙が水に飛びこむ音が聞こえる」と二句に間を置くべきである。俳句は二句一章の芸術である。
 何より大切なのは「や」と「に」の違いである。「蛙飛びこむ水のおと」という現実の世界と「古池や」という心の世界(この着眼が大切)が交錯する魅惑的な句境と受け取っている。なんでもないことのようだが、これが「蕉風開眼」と言われる根拠である。
「夏草や兵どもが夢の跡」「閑さや岩にしみ入蝉の声」を初め、辞世の句となった「旅に病で夢は枯野をかけ廻(めぐ)る」まで芭蕉の名句はことごとく、古池の句と同様に現実の中に心の世界を開く句である。「蕉風」とは、言い古されたものを越えて、また単なる写実を超えて、心の世界も描く。蕉風とは現実の世界に心の世界を取り合わせることだったと説く著者の見解は傾聴に値するだろう。

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中央公論新社から発売された長谷川 櫂の古池に蛙は飛びこんだか (中公文庫)(JAN:9784122058378)の感想と評価
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