キャプテン・アメリカ:リボーン (MARVEL) の感想

マーベルを代表するヒーロー、キャプテン・アメリカの復活譚です。

人気や知名度でいえば、スパイダーマンやウルヴァリンの方がお馴染みかも知れません。
「アメリカ大将」と呼ばれる名前や、星条旗まんまのコスチュームなど、マーベル映画で
知られるようになった今でも、「ダサい」「ただちょっと強いだけの常人」「渋さ・暗さがない」
等の印象にとどまっている方も多いキャラクターでしょう。

ですが、この名前、この衣装でヒーローとして第一線を張ること自体が、このキャラクターの
「ザ・ヒーロー」としての唯一無二のアイデンティティを表しているのです。
気恥ずかしい程に直球の名前も、実写映画の影響や時代の変化の中でも変わらない派手な衣装も、
逃げ隠れしない（＝常に悪党や批判者の標的となる）彼の不退転の覚悟と背負った使命の重さを示しています。
DCコミックスにおけるスーパーマン同様、彼こそがマーベル世界で誰もが（殺人上等のパニッシャーや
敵対する悪党達でさえも）一目置くヒーローの中のヒーローたる所以です。

本書はシナリオの展開と充実した邦訳版注釈のおかげで、一応この一冊だけ読んでもストーリーの流れは
追える構成になっています。ですが、本書のクライマックスは（何ページの何コマ目、という事ではなく）
「ヒーロー」の復活そのものにあり、その重みや熱さを堪能するためには、既刊関連書と合わせて
（既にお持ちの方は再度）読まれることをオススメします。
直接的には「ウィンター・ソルジャー」「シビル・ウォー」「デス・オブ・ドリーム」「バーデン・オブ・ドリーム」
「ロード・トゥ・リボーン」という流れがメインになりますが、ヴィレッジブックスが「デス・オブ・ドリーム」から
3年を経てようやく本書の出版に至ったのは、決して伊達や酔狂ではないでしょう。
その間を埋める（シークレット・インベイジョンやダークレイン等々）多くのエピソードが、キャップ不在の重みと、
ままならぬ多くのヒーロー稼業の苦悩、悪の跳梁する世界の暗さを伴って描かれてきたからこそなのです。