一神教と国家 イスラーム、キリスト教、ユダヤ教 (集英社新書) の感想

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参照データ

タイトル一神教と国家 イスラーム、キリスト教、ユダヤ教 (集英社新書)
発売日2014-02-14
製作者内田 樹
販売元集英社
JANコード9784087207255
カテゴリジャンル別 » 人文・思想 » 宗教 » 宗教入門

購入者の感想

この本を手に取る読者の殆どは内田先生の愛読者だろうと思う。内田先生の愛読者にこの本が受け入れられるのか、発売前からかなり気になっていた。
結論から言うと、表紙帯の異様なインパクトに比べ、中身は意外に普通で、ゆっくりと理路を辿ってゆくと「そういう考えもあるかもしれない」と思わせるだけの説得力のある仕上がりになっているのが不思議な「奇書」である。

本書が「奇書」であるというのは、内田先生による現代思想に関する一冊であり、現代中東入門としても読め、さらには一神教の入門書という側面もあるが、「なぜイスラーム共同体の統合は成されないのか」という大問題を普通の言葉で語り合い、さらにはグローバリゼーションなどの世界共通の問題などにも切り込んで、本筋はイスラーム政治学という余程マイナーな学問分野の中田学説を巡る両者の対談であり、これだけ書くと余程取っつきにくい本に見えるものの雑談が豊富で面白く読みやすいことにある。クロスボーダーは本書の重要な主題だが、本書自体がクロスボーダーであり収まりの悪さが、中身のおもしろさを引き出している。本書を奇書とする所以である。

第1章では日本のイスラーム史や戒律、倫理、文化といった一般的な概説書で扱われるような主題が「少し前の会社の応接室の小箱と灰皿のセット」(!)などを例に引きつつ論じられているのが、異例である。質疑応答の質問は凡そ定型的であるのに、回答に中田節が炸裂するのも面白い。

第2章ではユダヤ教、キリスト教、イスラームの比較が行われるが、教科書的な記述はなく「聖書は神の言葉というよりも神の言葉であるイエスに対する教会の証言でしかありません」といった分かり易い(断定的な)表現によって、キリスト教における教会や聖職者の重要性などが解き明かされ、ユダヤ教やイスラームと比較される。また、遊牧文化と定住文化、日本とユダヤなどの文化的な主題も扱われる。その後、イスラームの核心の一つである「内心不干渉」の原則が語られ、在米ユダヤ人のイスラエル観(!)などに触れられた後、ユダヤ教の超正当派(≒「原理主義」)とイランの「原理主義者」では話が通じるといった驚きの事実が語られる。

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