The Buried Giant: A novel の感想

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参照データ

タイトルThe Buried Giant: A novel
発売日2015-03-03
製作者Kazuo Ishiguro
販売元Knopf
JANコード登録されていません
カテゴリLiterature & Fiction » Authors, A-Z » ( I ) » Ishiguro, Kazuo

購入者の感想

10年ぶり、待望久しい、イシグロの長編小説。
発売と同時に読みふけった。
読了したとき、これまでのイシグロ作品の場合と同様に、めまいを感じ、深い寂寥に包み込まれた。

読み始めると、ページを繰るのがもどかしい。

The Remains of the Day (1989)、When We Were Orphans (2000)と、「戦争の世紀」の歴史を飽くことなく描いてきたイシグロは、Never Let Me Go (2005)で、「改変歴史ものSF」alternative historyというジャンルに踏み込んだ。
この後、いったいどこへ行くのか? もう行くところがないじゃないか。
その答えは、はるかなる過去のブリテン(まだイングランドになっていない)だった。

侵入・定住したしたサクソン人と原住民ブリトン人の間につかの間の平和が保たれている時代というのだから、歴史的には5世紀から6世紀頃という設定だろうか。
そこは悪鬼(ogre)やらドラゴンやらが跳梁するというファンタジーの世界である。サクソンの強靱な戦士、怪しげな修道僧、さらにはアーサー王の円卓の騎士までが登場してくる。
地下のダンジョンでの魔物との闘い、日本の剣豪小説を思わせるような、一刹那の剣戟が生死を分ける緊迫した決闘、燃えさかる尖塔からの決死の脱出、等々。

息もつかせない面白さ?
その通りだが、いわゆるヒロイック・ファンタジーの面白さとはちょっと、いや、だいぶ違う。

主人公はアクスルAxlとビアトリスBeatriceという年老いたブリトン人のカップル。
この二人が「息子が住む村」に向けて旅をする。
旅の中で、失われていた記憶が徐々によみがえってくる。
一見無力で無害そうなこの老夫婦には何か隠された暗い過去、本人たちが忘れてしまっている過去があるらしい。
読者にページを繰らせていく駆動力は、これまでのイシグロ作品に共通してあった「記憶の謎、語りの謎」なのだ。
二人の冒険の旅は、過去の悲劇を、巨大な戦争の影を次第次第に明らかにしていく。

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