教育委員会――何が問題か (岩波新書) の感想

13年12月20日の東京新聞朝刊に『都教委 異様な「粘着気質」 --- 君が代不起立教員 前代未聞の再処分』と題する記事があります．東京都教育委員会は都立高校の祝典で起立を拒んだ教員7人に減給の処分をしましたが，最高裁は今年9月．この処分を取り消し，都教委に対して処分乱発をいさめ，紛争解決に向けて教員らと話し合いをするように求めました．それにも拘わらず，都教委は最高裁の勧告を無視して事件後，8年も経って懲戒処分した．この姿勢を東京新聞は粘着気質で，まるでストーカーだと批判しました．私は教育委員会をよく知りません．ストーカーまがいのことをする教育委員会の実態を知りたくて本書を読み，やっぱりそうなのかと納得し，同時に暗い気持ちになりました．

本来，教育委員会は子供たちのためにどう教育すればいいのか，それを考える組織です．‘子供たちのために’こそあるべき教育委員会ですが，実態はそれと逆で，‘行政のための’ 教育委員会になっています．子供たちを行政の基本方針に沿うように，はっきり書けば愛国心をもった子供に仕立て上げようと「道徳」教育する．そのための上意下達のシステムが教育委員会だった．それだけではない．文科省の指示通りに教育しているかどうか，教員を常々チェックしている（14頁）．だから上記報道の事態も起こりうる．多分，報道事例は氷山の一角でしょう．「道徳」を教える割にいじめ問題は解決されず．12年度には統計をとりはじめて最多数の19万件を超しました．

ところで，吾ら国民には思想・信条の自由があります．憲法でそうなっている．もちろん教師にも思想・信条の自由がありますから，思想・信条の問題で文科省の指示に仮に従わなくても教師は守られている．憲法は文科省の通達より上位にあって教師を守る．憲法に背くような教育委員会の処置は違憲です．更に憲法は行政や公務員を次のように規定しています．

第99条　天皇又は摂政および国務大臣，国会議員，裁判官そのたの公務員はこの憲法を尊重し擁護する義務を負う．

行政の責任者はすべて公務員です．教育委員会のメンバーも公務員です（50頁）．そうであるからには，教育委員会のメンバーには