遺体: 震災、津波の果てに (新潮文庫) の感想

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参照データ

タイトル遺体: 震災、津波の果てに (新潮文庫)
発売日2014-02-28
製作者石井 光太
販売元新潮社
JANコード9784101325347
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 社会学 » 社会学概論

購入者の感想

東日本大震災の後、生き延びた人々が混乱と深い悲しみの中で、津波の犠牲者となった方々のご遺体とどう向き合ったかのルポタージュ。すごく痛くて悲しかったけれど、一晩で一気に読んでしまった。
あの大惨事は今でも思い出すと胸が詰まるけれど、この本を読むまでは、あの災害当時に感じた哀しみや辛さを忘れてしまっていた。いまわたしたちの周りに広がるこの平和な世界は当たり前ではないこと。愛する人々と共に元気で過ごせる今日が明日も必ず来るとは誰にもわからないことを改めて肝に命じて、小さなことでも大切にして生きようと深く思い直させられた本。
想定外の出来事が起きて人間同士みんなで協力してそれを乗り越えるとき、わたしたちの根底に流れる愛が見える。想像だにもできないあの地獄のような状況で見せてもらえたのは、日本人らしい愛と尊敬の姿勢だなと、度々号泣。

著者の石井光太さんの、誠実であり真摯であり、そして「正しい心」で伝えようとしてくれている文章もものすごく良い。

日本語には「死体」の他に亡き人を敬う心を込めた「遺体」という言葉があって、ふと英語やスウェーデン語では何というかなと調べてみたけれど、遺体の意味に当たる言葉はなかった。わたしは日本語が母国語の日本人で良かったなとしみじみ思った。

 釜石市でご遺体の収容、身元確認、葬送に当たった人たちへのインタビューを丁寧に積み上げた一冊。遺体の腐敗を心配し、「今年だけは春が来てほしくない」と言った安置所の世話役。自分の腕から流れ去った乳飲み子の前で泣き崩れる母親。自分の目の前で津波に消えた人を、後日遺体として見つけてしまう過酷な現実……。取材に応じた人たちは過酷な事態に立ち向かったが、向き合えずに逃げ出した人たち、あるいは、火事場泥棒で檀家を増やそうとする寺の話などもさらりと書いていて、きれいごとばかりでは済ませていない。
 新聞やテレビはどうしても生者の物語に焦点を当てたがる。だが、本当に前を向いて歩くためには、重い重い悲しみを受け止めることから。筆者の思いはそこにある。長く続く再生への苦しい歩みに寄り添うには、まず忘れないこと。忘れない為に、ぜひ手に取ってほしい。

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