藤森照信の茶室学―日本の極小空間の謎 の感想
参照データ
タイトル | 藤森照信の茶室学―日本の極小空間の謎 |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 藤森 照信 |
販売元 | 六耀社 |
JANコード | 9784897377049 |
カテゴリ | ジャンル別 » アート・建築・デザイン » 芸術一般 » 芸術理論・美学 |
購入者の感想
著者による「The Contemporary Tea House」2007のIntroduction19ページ分を日本語で拡張した書き下ろし。茶室から見た日本建築史にもなっており、世界の建築の中でもユニークな茶室の特質を考える。これまでの研究蓄積をふまえながら(とくに中村昌生)、近代建築での位置づけにつないでいく、分かりやすいお話になっているところが素晴らしい。茶室空間の原型ともいえる利休の待庵(たいあん)の成立過程を手書きの図を並べながら考えていくところなど、考え方がよく分かる。茶室は寺社建築の対極にあり、数寄屋の源流となるその流れは「建設業界」の中では格の低いものだったことが実証されているのも勉強になった。締めには、あちこちで注目され、大胆で遊び心に満ちていると見える「藤森茶室」が、じつは著者なりの歴史観に立ったロジカルな造形でもあることも明かされる。巻末の磯崎新との37ページの対談は、内容のサマリーにもなっている。中身の詰まった良い本である。
著者あとがきを読むと、このような本が生まれるには編集者のなみなみならぬ意欲が不可欠と分かるが、出版事情が厳しいこの時代、その実現が難しくなってきている気配もうかがえ、知と書物の未来についても考えさせられた。
著者あとがきを読むと、このような本が生まれるには編集者のなみなみならぬ意欲が不可欠と分かるが、出版事情が厳しいこの時代、その実現が難しくなってきている気配もうかがえ、知と書物の未来についても考えさせられた。