「最悪」の核施設 六ヶ所再処理工場 (集英社新書) の感想

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タイトル「最悪」の核施設 六ヶ所再処理工場 (集英社新書)
発売日2012-08-17
製作者小出 裕章
販売元集英社
JANコード9784087206531
カテゴリジャンル別 » 科学・テクノロジー » 化学 » 一般

購入者の感想

ネット動画で講演会を時折聞いていた京都大学原子炉実験所助教の小出裕章氏、東洋大学変動地形学教授の渡辺満久氏、長い間原子力関連のルポを報告してきた明石昇二郎氏の3氏共著による新書を手にしました。地学マニアとしては興味ある1冊でした。

 小出氏を知ったのは偶然ネットで見かけた小出氏の講演動画です。講演は1999年JCOで発生した臨界事故の紹介で、内容は強烈でした。被曝した直後の労働者の大内さんの右手はほんのり赤く日焼けした感じです。それでも2か所の大病院は診療拒否、東大病院で治療が開始されました。しかし26日後には大内さんの肉体が崩壊しはじめたのです。これはいまでも鮮明に記憶にあります。
 本書で小出氏は専門家として再処理技術は日本はドイツやフランスに劣り決して胸を張れるものではないと指摘しています。考えさせられます。
 一番興味あったのが各原子力発電所における活断層に関する記述です。渡辺氏の地質の専門家の立場から客観的に問題点を比較的わかりやすく指摘しています。表題の六ヶ所再処理施設にも大きな断層の存在が提示されています。
 安全委員会は活断層ではないと一蹴していますが渡辺氏の指摘を完全に否定するのも無理があると感じました。
 地震学会は3.11で予知できず素直にごめんなさいと反省しています。想定外はもう許されないと。渡辺氏は細再稼働には絶対反対ではないが活断層調査や安全審査には欠陥があるうちは反対と記されています。今後も中立的な立場で各発電所の地質調査を第三者的立場で行って欲しいと感じた報告です。
 最後に、六ヶ所村が動かないと本当に困ることを鋭く指摘している明石氏の指摘が最後に印象にのこる1冊でした。
 今後、プレート型の巨大地震が東北から北かもしくは南に連続して発生するのではとの指摘があります。巨大地震の津波に運よく耐えても派生する余震で活断層が動いた場合は。気になります。

本書の記述のもとになった基礎データがどれだけ信頼にたるものなのか、シロウトの私には判断できません。
しかし、論旨は明瞭でわかりやすく、大変納得できました。

事故のシュミレイションを荒唐無稽かつ噴飯物とお感じになったレヴュアーもいらっしゃいます。
では、電力会社が作成しお上が認めてきたシュミレイションは、どうだったでしょうか?
経済性や権益などに左右されずシュミレイションしていることを考慮するに、本書の方が現実味があるのでは?
被害のシュミレイションは、考え得る悪い場合に近い方がいいと思うのです。
現に、法律や国際基準を適用するなら「放射線管理区域」になるはずの線量がみとめられる地域に、人々がたくさんいるではありませんか。
危機管理的視点でシュミレイションが行われなかった&まともな安全評価を行わなかったことの犠牲者です。

原子力安産委員会の地震・地震動評価委員会及び施設健全性評価委員会「ワーキング・グループ4」の主査=国の安全審査の責任者による次の言葉が強く印象に残りました。

「・・・取材に答えたって、私の方にはなにもいいことはないので」
(六ヶ所村の核処理工場の耐震性審査委員会についての見解等についての取材に対し)
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批判及び問題提起された関係者による反論の書を待つ

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