アウトロー [Blu-ray] の感想

監督は脚本家として有名なクリストファー・マックァリーです。監督デビュー作でもある前作「誘拐犯」は非常に渋いクライム映画で、70年代アクション映画が好きな人には堪らない作品でした。

本作も同様に70年代映画（ドン・シーゲル、ジョン・フランケンハイマー、サム・ペキンパー、ウォルター・ヒルなどの監督作品）のような渋い作品に仕上がっています。

確かに今の映画からしたら、やぼったい感じも否めないですがトム・クルーズ（70年代ならスティーブ・マックィーン、クリント・イーストウッド、チャールズ・ブロンソンか）のスター性が魅力的で飽きることなく見ることができます。

しかしトム・クルーズ目当てで鑑賞した人が肩透かしを食らったという感想が多いので見る人を選ぶ作品なのかもしれません。

監督はかなりのガンマニアなので前作「誘拐犯」同様に銃撃戦がカッコいいです。

ロバート・デュヴァルや、なぜか悪玉にヴェルナー・ヘルツォーク監督と渋いキャスティングになっています。

個人的にトム・クルーズは好きではありませんが、作品選びのセンスは良い俳優（マグノリア、コラテラルなど）だと思います。

ブライアン･シンガー監督の傑作｢ユージュアル･サスペクツ｣でアカデミー脚本賞を受賞し、同監督の｢ワルキューレ｣以降トム･クルーズお気に入りの脚本家となったクリストファー･マッカリー。彼の70年代趣味全開だった｢誘拐犯｣に続く監督2作目。

本ブルーレイのインタビュー映像では、原作者のリー･チャイルドが、主人公ジャック･リーチャーを“謎の多い流れ者で、堂々たる一匹狼”、“過去も未来もなく今を生きていて、事件を解決し去っていく。西部劇でよくあるパターンだ”と語っている。さらに原作での主人公の体躯が身長195cm、体重113kgのノッポとなれば、他のレビュアーの方の指摘にもあるように、主人公のモデルはクリント・イーストウッドに他ならない。

マッカリーが本作で目指したのは、イーストウッド的西部劇（となればマカロニ･ウエスタンも含まれるが）の現代版だ。それゆえ今の観客にとっては時代錯誤的に映ってしまう部分もあったはずで、興行的に大成功とまでいかなかったのも、そのような作劇スタイルと、加えて、基本的に“陽”のイメージのクルーズが、イーストウッド的な“陰”の存在感を醸し出せなかったことも少なからず影響しているように思う。陰謀の真相や細部の甘さ（明らかに指名手配されているはずの主人公が、自由に動き回っているとか）なども気になる点だ。

しかし、あえて前時代的なアクション映画に挑戦するマッカリーやクルーズの姿勢を見ていると、そんな欠点もついつい許せてしまう。ロバート･デュバルの起用は、｢誘拐犯｣でジェームズ･カーン、ジョフリー･ルイス、スコット･ウィルソンといった70年代俳優をズラリと登場させたマッカリーならではのセンス。鬼才ヴェルナー･ヘルツォーク監督の意外な役者っぷりも楽しい。トム･クルーズ主演作としては物足りない向きもあろうが、70年代映画好きとしては、この映画、やっぱり頬がゆるまずにはいられない。今後のシリーズ化は不明だが、いつかまたマッカリーとクルーズの“共犯関係”をぜひ見てみたいものだ。差し当たっては｢M:I 5｣かな？