山口百恵 赤と青とイミテイション・ゴールドと (朝日文庫) の感想

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参照データ

タイトル山口百恵 赤と青とイミテイション・ゴールドと (朝日文庫)
発売日2012-05-08
製作者中川 右介
販売元朝日新聞出版
JANコード9784022617255
カテゴリエンターテイメント » 音楽 » J-POP・日本の音楽 » 歌謡曲・演歌

購入者の感想

本書の「はじめに」のところで『現在のJ-POPのほとんどは、半径五メートル以内の私(=作詞した歌手自身)の周辺と当人(=私=作詞した歌手自身)には重要でも他人にはどうでもいい内面を私小説風に吐露するだけだが、歌謡曲はそうではなかった。虚構をいかにリアルに表現するかが問われるジャンルだった。』との一文で、思わず、「自分が歌として聴いていたものと、J-POPで売れているにもかかわらず、つまらないと感じる、この違いはなんだ?」と感じていたことへの回答を得た感じがした。

山口百恵さんや中森明菜さんの歌には、作詞家が歌詞に描いた内容や込めたイメージをどう汲み取り、いかに歌で演じて見せるかということが歌を聴くと感じられるが、今の歌は、AKB48の歌に代表されるようなリズムに歌詞をうまく乗せてテンポで聴かせ、歌の下手さは人数でカバーする(誤魔化す)だけであったり、歌の内容ではなく、イベントに絡ませて、必要以上にCDを買わせたり、売る側が歌自体を大切にしていないのだから、歌の人気が衰えるのも当たり前。また作詞家自体が歌手ということが多くなったことで、自分の思いをそのまま歌詞にして歌っているだけのことが多く、聴く側のことは考えられていない感じがする(そのまま歌にして、聴き手が共感できる歌なら、まだ救われるが・・・)。

歌謡曲は昭和の代表と揶揄されるが、改めて聴き直してみると、記憶に残っている歌謡曲にはドラマがある。

作詞家は、ドラマで言えば脚本家にあたる。作詞家には脚本家としての客観的な視点が必要であり、この視点があるから歌を提供された歌手が歌で演じることができるのだ。ところが半径5メートルに該当するであろう私(=作詞した歌手自身)には、脚本家としての客観的な視点がなく、自分本位ということなのだろう。
中川氏がどう思われるかは判らないが、脚本家のような客観的な作詞家で歌手で成功した人は、たぶん小田和正さん、中島みゆきさん、竹内まりやさん、ZARDの坂井泉水などかもしれない。

著者は百恵の2学年下とのこと。当方はちょうど10歳上であるので時代的にも少しばかり上から目線になり勝ちだが、先のレビューの方も触れられている如く、ネットに最近になってあげられた「マイストーリーその他」の彼女の発言を聞いたところは、63歳になっている今現在の自分と比較しても驚嘆すべき人格に関心するばかりであるが、たしかにその点が触れられていないのは、もの足らない感じは残る。
 この本は、最後に参考文献としてあげられている印刷物を中心とした記録を丹念にまとめたもので、「山口百恵とその時代」を追想するためのひとまとまりの資料として書かれると著者も語っているが、放送記録や芸能雑誌関連は含まれないとも語っている。ただ、小学館1980年12月20日臨時増刊「微笑」が抜けているのは惜しい、渡辺さんの娘さん2人の部屋に下宿したこと、ベランダに増設したお風呂とともに渡辺さん宅が写っているのに、この雑誌は是非とも文献として復刻して欲しいものである。
 彼女の埋蔵量の深さと残した奇蹟は、その全体を捉えようとすればするほど、まさに群盲像を評す、とならざるを得ないのではないか。その意味では、百恵マニアにとっては知っていることばかりの感がいなめない。特に、川瀬さんの回想記からの転載が、明確に引用表示がないのも少し気になる。
 しかし、STRONGER THAN PARADISE さんのサイト、2012年4月17日「持運び式ミュージアム、山口百恵完全記録」ではマニア以外の人には、ガイドブックが必要とあるが、この本はまさに、これに当たる労作であろう、特に、これから総体としての山口百恵を知ろうとする方には、買って損はない。
 又、著者は、平岡正明「山口百恵は菩薩である」と四方田犬彦編「女優山口百恵」を評論としてあげているが、前述のSTRONGER THAN PARADISE さんのサイトの評論も是非ともあげておくべきであろう。
 更には、百恵の2歳上の藤井丈史マイスペースブログ「日本語のうたの声と言葉」では、専門家としての視点から最大限の分析・評価・賛辞が,山口百恵に贈られていて、心強い。
 芸能雑誌・ラジオ放送も含めた、このようなガイドブックが、更に今後世に出てくることを期待したい。

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