対岸の彼女 (文春文庫) の感想

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参照データ

タイトル対岸の彼女 (文春文庫)
発売日販売日未定
製作者角田 光代
販売元文藝春秋
JANコード9784167672058
カテゴリ文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 » か行の著者

購入者の感想

レビューの高さに惹かれ手に取ったが、とてもよかった。
過去と未来を行き来するような視点で書かれており、学生、そして社会人になってからの女同士の友情についてさりげないタッチで深く書かれている。
女同士の友情についてがメインだが、個人的には物語の間に挟まれる夫婦間の軋轢の描写がなんともリアルで生々しく印象に残った。
総じてなにか大きな事件が起きるでもなく、出来事を羅列してみれば大したことは起きてないのだが、それでも本作は夢中で最後まで読ませる力を持っている。
そういえば学生の頃の友人で社会人になった今でも交友が続いている人は何人いるだろうと読了後ぼんやり思ってしまった。そして社会人になってからの友人の作りにくさといったら。
普段見過ごしてやり過ごしている部分を的確についてくる傑作。女性はもちろん、男性が読んでも楽しめる作品に仕上がっていると思います。

だいぶ前に話題になったこの本。すこし時代に乗り遅れていますが、今頃になって購入し、読んでみました。感想としては、話題が終われば廃れるような類の本ではないということ。いつでも手にとられ、ある種の読者に深い共感と癒しをもたらす名作だと思いました。

私事ですが、少し前に親しい友人と立て続けに仲たがいしました。ずっと友人で居られる、ずっと同じ目線で物事を見ていられる、何も分かっていなかった学生時代のように、お互いに共感しあい慰めあいながら、きっと、ずっと、うまくやっていける・・・そういう風に女の友情を漠然と信じていた矢先、終わりは突然にやってきました。そう、この本に書いてあるような、なんでもない出来事で。日常の中にいくらでも転がっているような、ほんの些細な状況の違いや、考え方の温度差が小さなホコリのように重なって、いつしか私と彼女の間には越えられない壁が立ちはだかっていました。

この本に登場する葵とナナコのように、限りなく純粋に、同じ方向を見て他意も無く笑いあうときだってあった。なのに、どうしてでしょうね。

ハードカバーの帯にいいこと書いてます。本当に、心から信用できる女友達が必要なのは、社会に出て、重たい荷物を背負い、現実を直に突きつけられている今なのに、というようなこと。

どうして、大人になれば、こんなにも同性の友達ができにくくなるのでしょうね?十年来の友人とさえ、関係を維持することが難しくなる。

友情関係もそうなら、夫婦関係もそう。愛をうそぶいていた夫が、想像以上に家事を手伝わず、他人事のように振舞う。毎日家事をきちんとこなし、身の回りのことをいくら整えても、それがプラス評価になることはない。当たり前のゼロ地点を形作るだけ。そういうことに、一体どれほどの人が失望していることでしょう。

どうして、あんなにも尊かった友情や愛情が廃れていくのか。その答えがこの本にあるわけではありません。

帯やら新聞広告では「子を持つ女とそうでない女」の対立?みたいに書かれていたが全然違うと思った(いい意味で)。
確かに今、三十路半ば、兼業主婦ただしパート、子供1人のみ、のある意味小夜子そっくりの私に友人と呼べる人がいなくなっていることに気づく。
日々の家事、育児、仕事、雑事に忙殺されている。友達と呼べた人がまったくいなかったわけではない。だけど彼女らはかつてのナナコのように遠い存在、連絡すらとれないものが多いのだ。
家庭という殻の中で、ママ友という名の仮想友人?に囲まれた小夜子みたいな主婦はたくさんいると思う。
そしてまた葵のようなひともきっといると私は思いたい。「なんのために年を重ねるのか」と小夜子や葵のように自問しながら、もしかしたら逢えないかも知れない、そんな稀有な、存在を求めて、生きていくのかなあと切なくなった。
恋人を見つけるよりも、夫を見つけるのよりも、ずっとずっと、友達を見つけることのほうが難しいと感じるこの頃の思いに、この本はすこしでも支えになってくれた。

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