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東方 外来病

はらかま #3 - 16.01.13 22:55
初めまして。
SS投稿は初めてですが、自分の思うように書かせていただきます。
では、始まります。

この記事のまとめ

―――
夏。それは四季の中で調度真ん中あたりに属する季節。
日光が入らない永遠亭でもやはり暑い。昔までは暑さというものは感じなかったが、最近になって暑さを感じるようになった。夏でなくても、冬になれば当然寒さも感じる。その理由は、私、―八意永琳―の姫であるー蓬莱山輝夜ーがこの永遠亭の『永遠』を解いてしまったからである。
輝夜の能力は、永遠と須臾を操る能力。これはありとあらゆるものに永遠を与え、その物の歴史を進めなくするという事。例えば、とある貴重な壺に永遠を与えれば、たとえ床に落としても、歴史が進まない限り割れることがないという事。食べ物に永遠を与えれば、一生腐る事はない。
その力を輝夜はこの永遠亭その物に与えた為、永遠亭にある物、永遠亭にいる者、全てに永遠が与えられた。そのため私は四季というものを感じなかった。
しかし、そんな生活もずっとは続かなかった。ある異変がきっかけで、この永遠亭の永遠を解いてしまった。だから今では普通の人間と同じ、四季よりよりの体の感じ方を味わっている。

「永琳。……今日も暑いわね。」

額に汗を垂らしながら、蓬莱山輝夜が部屋に入ってきた。

「姫。タオルをどうぞ。」

「ありがとう。…それにしても、何も起こらなくて、平和ね。」

輝夜が唐突にそう言った。言われてみれば、最近は患者も来ないし、やることも無い。平和と言われれば平和なのかも知れない。

「そうですね。」

しかし平和が毎日続く訳がない。いつかはとてつもない事というのは必ず起こる。そういうものだ。
この世のものには全て良いこと、つまり長所がある。長所があれば逆に短所もその分ある。長所と短所は比例している。いや比例していないと、『もの』は『もの』ではなくなってしまうだろう。
すなわち、こう毎日平和だという事は、いつか近いうちにとてつもない悪い事、短所が起こるという事を表している訳である。

「ここまで来なければ良いのだけれど。」

「どういう事?」

輝夜はこの事にはまだ感ずいてないようだ。私は輝夜にはまだ言わず、そのまま冷たいお茶を持ってくる事にした。
ーーー






注)オリキャラが出ます。

レスポンス


はらかま #82 - 17.02.12 22:34
12b ―永遠亭― 八意永琳

「思うのです。私たちは過去に大きな過ちをした。そしてそのせいで今この場所にいる。
『穢れ』という世界に。月の民は穢れ無き者たちです。何故月の民がこの世界を嫌うのか・・・。それはこの世界に『死』という穢れがあるからです。私たち月の民は穢れを無くして生きている存在。でもこの世界では穢れこそが掟であり存在意義。そこに大きな矛盾が生じます。私は・・・私たちはこの世界の掟を破っている。そんな私たちにこの世界にいる権利があるのでしょうか・・・。」

姫様は無言で私の話を聞いていた。

突然姫様が私の右手の上に左手を置いた。顔は目の前に広がる竹林を見ていたままだった。

「そうね。たしかに私たちは罪人。そして永遠そのもの・・・この世界にいてはいけない存在だわ。でも、この世界に来て最初は全てにおいて反してはいたけれど今は違うわ。この世界穢れに浸かっているでしょ?例えば・・・」

そう言いった瞬間急に戸が開く音がした。

「師匠。今日はいっぱい薬が売れましたよー!」

ウドンゲの声だった。そしてその瞬間私は気づいた。私たちは永遠そのもの。この世界の掟を守ることが出来ない。でもこの世界の穢れに浸かることは出来るのだと。

「そう。あんなふうにね。・・・あともう一つあるわ。」

姫様が言った。そして姫様は再びあの優しい笑顔をして

「この幻想郷は全てを受け入れるのよ。」

そう言った。


はらかま #82 - 17.02.12 22:33
12a ―永遠亭― 八意永琳

「姫様。お隣いいですか?」

私は夏の日差しを浴びている縁側に座っていた姫様を見つけて言った。

「永琳。・・・いいわよ。」

姫様は優しくほほえみ左手でポンポンと縁側を叩いた。こんな顔をしている姫様を見るなんてあの日までは思ってもいなかった。
更に言ってしまえば姫様がこんな愛おしい顔をするお方ということさえ思っていなかった。
しかし、今ではこうしてゆったりとした日々を過ごすことが出来ている。
私と姫様、それにウドンゲやてゐ。永遠を捨てたはずなのにこの暮らしだけは永遠に続くのではないかと思ってしまうほどだ。
いや、永遠を捨てたからこそこの新しい『永遠』が生まれているのかもしれない。

でも・・・

「・・・姫様。」

私は姫様にある質問をした。

「姫様。この世のものは姫様の力がない限り永遠に続くことはありません。どんなものでもいつかは死に、腐り、散り、廃れ、崩れ、割れ、破れ、そして消えます。それがこの世の一つの掟とも言えるでしょう。・・・しかし、それでも消えないものというものがもしこの世にあるとすればそれはこの世の掟に反しているということになります。」

私の話を姫様は真剣に聞いてくれていた。私はそのまま話を続けた。


はらかま #3 - 16.01.14 00:04
長くなってすいません。
これからは一日か二日に一回更新していきます。
感想などの意見はここにお願いします。
感想をいただけたら嬉しいです。

13 件のレス

はらかま #58 - 17.01.11 23:21
11b ―守矢神社― 東風谷早苗

でも、奇跡を唱え始めてから一日経ったとき、私の体に異変が起こった。
急に体が動かなくなったのだ。自分の意思では動かすことも声を出すことも出来なくなった。
その時、私じゃない誰かが私を操っているかのような感覚を襲った。自分の意思ではないのに口が勝手に動きだし、続きを唱え始めた。
そして、瞼も閉ざされた。視界は暗いはずなのに何故か玲さんの姿がはっきり見えるような気がした。まさに、心で見ているような感覚だった。

体が急に暖かく感じ始めた。私はいまだに操られたままの状態でずっと玲さんの姿だけが見えている。
その時、私の心の中に小さく何かの音が走ったのを感じた。それは一定のリズムをとり、徐々に大きくなっていった。更に体が温かく感じた。

そして、

私は閉ざされた瞼を急に開けれるようになった。私を操っていたような感覚はもう無くなり、体も自由に動かせれる様だった。
しかし、そんな事は私が見た光景が一瞬にして消していった。玲さんの傷は完全に治っていて更に胸が大きく上下に動いている。正常な呼吸もしているのだ。
信じられなかった。あのもう治らないような重傷が経った一日で治ってしまったからだ。
私は、あの時私を操っていた人物が玲さん本人ではないかと考えた。玲さんが無意識に自らを守ろうとするために、自分を助けようとする人物に意識だけが入り込みその人物の力を今まで以上に引き出すのではないかと・・・。
そして、そのまま次の日、玲さんは眠りから静かに目を覚ました。


「・・・はい。そうですね諏訪子様。」

私は箒の動きを止めなかった。もしかしたら、諏訪子様は玲さんの力を始めから知っていたのかもしれない。それに神奈子様も。

「ですが、もしそうだとしたら・・・玲さんは・・・・・・。」



とても危険な人物になってしまうかもしれません。




はらかま #58 - 17.01.11 23:20
11a ―守矢神社― 東風谷早苗

區璢美さんと玲さんを部屋に案内した後、私は箒を持って神社の掃除を行った。
風で舞った埃や落ち葉を掃いているといつの間にかそれを座ってみている人が一人。この神社の神様、諏訪子様だった。

「ねえ、早苗。」

諏訪子様が突然私に言った。
私は掃きながら顔だけを諏訪子様に向けた。

「はい?」

「あの子、実は凄いんじゃない?自分がまだ知らないだけで。」

「・・・・・・。」

それだけで諏訪子様が誰のことを指しているのかは理解した。私も、あの人は今まで見た人の中でも飛び抜けて異様だったからだ。
多分、いや、きっと神奈子様も思っていることなのだろう。

「だってさあ、あの子本当は・・・

 
     死ぬはずだったのにね。」

諏訪子様が言った。
そう。本当だったら彼女、玲さんは私が運んだあの時もう息は消えかけておりもう死んでいる同然だった。
私はもう遅いと分かっていても彼女を横にし、部屋に籠もって奇跡を起こそうとした。
そもそも私の力ではあの彼女の傷を治すのには長くても丸五日以上はかかる。軽い擦り傷などは直ぐに治るのだが彼女は全身に怪我をし、尚かつ血液も少ない状態だったため奇跡を起こすのもそれ相応の時間が必要になってくる。そしてそうしている内に玲さんは死んでしまうということも始めから悟っていた。



はらかま #57 - 17.01.10 00:47
10 ―守矢神社― 桃青 區璢美

守矢神社にいさせてもらってから二日が経った。
今朝、突然神社の奥の戸が開き、そこから一人の女性が現れた。
髪が緑色をしていたのでそれがすぐに私を助けた人だと確信した。

「あなたが早苗さんね?私は桃青區璢美。以前は助けていただいてありがとう。」

「はい。私がこの神社の巫女、そして現人神でもある東風谷早苗です。あと私のことは早苗でいいですよ。」

早苗と私が自己紹介をした直後、再び奥の扉から一人の女性が顔を出した。

「・・・玲!」

「あ、師匠。今までご迷惑を・・・ってちょっと!?」

私は部屋から出てきた玲を思いっきり抱きしめた。
死んでいない。ただそれが嬉しかった。頬を温かい水が流れるのが分かった。

「し、師匠。そ、そんな急に抱きつかれると困りますって~。」

玲が困惑しているのが分かる。でもそんなことは気にしない。私は玲をさらに強く抱きしめた。
私は玲に気づかれないように抱きながら涙を拭くと腕を離し、改めて玲を見た。
服は所々破れてはいるが、肝心の傷はもう何処にもなかった。玲も、もう異常はないと言っていた。

「凄いわね、早苗って。」

私は振り向いて、諏訪子、神奈子と話している早苗にいった。」

「え、あっ、はい。これでも神ですからね。こんなことは朝飯前ですよ。」

早苗が笑顔で言った。彼女の笑顔はとても心に残るようなものだった。

その後、早苗は私たちに「玲さんはまだ完全に体力が回復したわけではないのでもうしばらくこの神社で様子を見ましょう。」と言い、私たちをここにまだ留まらせてくれた。
部屋まで早苗と行き、「何かあったらいつでも言ってください」と言い残し早苗は部屋を出て行った。本当に至れり尽くせりで申し訳なく思った。

玲は疲れていたのか部屋に入ると眠ってしまった。
私は玲の隣に座り込みながらふと考えた。

(このせかい・・・幻想郷はとても美しい。でもとても残酷で恐ろしい。こんなに美しい場所は私たちがいた世界では見たことも聞いたこともなかった。でもあんな人を襲う妖怪も見たことも聞いたこともなかった。)

縁側から入る風が私の髪を揺らす。
とても涼しく、心地よかった。でも少し心のどこかに穴が開いたようなさみしい気持ちにもなる気がした。

(長所と短所・・・。表裏一体ね、この世界は。・・・いえ、そんなのどんなものにも言えるのかもしれないわね。)

私は風に吹かれながら玲の頭をそっと撫でてみた。


はらかま #59 - 17.01.08 21:23
―香霧堂― 霧雨魔理沙

前に本で調べたことがあったが、緑茶には滅菌作用があるらしい。
ただの緑色のした葉を細かくしてお湯を注ぐだけである種薬が出来てしまうというのだからこれまた不思議な物だ。

(・・・なんてそんなんだったら今頃こんな病気なんて人っ子一人かかりゃしないぜ。)

そんなことを思った私は香霧の店に置いてあった煎茶を啜った。
緑茶を飲もうとして箱に緑茶と書いてあった中身の葉を使ったらまさかの煎茶だったのだ。
まあ煎茶も煎茶で庶民的な素朴な味わいが好きなので文句は言わなかった。

「・・・やっぱり香霧にも分からないか。」

数分経ってから私はさっきから考えている(ふりをしているだけなのかもしれない)香霧に言った。

「まあそういう事になるね。」

案の定予想通りの答えが返ってきた。第一紫が知らない事を香霧が知るわけがない。たしかに香霧は向こうの世界については詳しい。だがこの幻想郷で一番物知りかつ向こうと関係しているやつは紫だ。

「まあ強いて言えば、多分この病気は外の世界でも流行しているということぐらいだね。」

香霧がさりげなくものすごいことを言った。

そもそもこの幻想郷は外の世界と表裏の関係にある。向こうの世界で使われなくなった物や存在を否定された物また忘れ去られた物が幻想郷に現れる。
神奈子、諏訪子、早苗なんかも向こうの世界で人間からほとんど信仰されなくなったからこの世界へ来たらしい。
それなのに向こうの世界でも流行ってるものが幻想郷にも来るというのは今までありえなかった。

「そういうことか。紫が異常って言ったのも分かるぜ・・・」

よっと座っていた壺から飛び降りた私は箒をもって香霧堂を後にした。

(さて、菫子を探すか・・・。はあ~面倒くさいことこの上ないぜ。)

空を飛びながら誰も居ない人間の里の上を飛んでいった。



はらかま #52 - 16.06.30 00:04
―守矢神社― 桃青 區璢美

温かくて優しい匂い。
嗅いだことのない匂いだがなんだかとても懐かしいような匂いだ。だんだんと体の力が抜けていった。
・・・嗚呼。心が軽い。体がまるで重力を感じず、ふわふわ浮いているような感覚だ。
言葉に表すことが出来ないほどの安らぎ。
どこからか聞こえる無数の音。それは、川の流れ。風に揺れる木々。小鳥の歌声。目で見ることは出来ないが、その一つ一つがまるで作り上げられたの唄のような。聞こえる音全てが独特の音色を響かせ、その全てが調和する。どんな曲よりも素晴らしい最高の唄だ。

私はこの唄を知っている。その唄は玲とこの世界に来たときに居た場所と同じところで歌われていた。あの時は眠ろうとした私を玲が起こしその余韻に浸ることが出来なかった。だが、今は思う存分それに浸ることが出来る。目では見えなくてもその唄を聴くだけであの素晴らしい風景が脳裏をよぎった。私はその唄に酔いしれた。

(なんて素晴らしいのかしらこの世界は・・・・・・。)




私はずっとあの素晴らしい唄に耳を傾けていた。しかし、その時私は急に目を開けた。自分の意思で開けたわけではない。ただ、誰かに呼ばれているような気がしたからだ。唄に混じって誰かの声が聞こえてきた。その声に見覚えはなかったが私の名前を何度も呼びその度に「早く見つけて」と聞こえてきた。
その瞬間今まで聴いていた唄はピタッと鳴り止み無意識に目を開けたのだ。

「あ。起きた?」

どこからか声が聞こえた。その声には幼さがあった。首を少し曲げて横を見るとそこに居たのはカエルの帽子だった。

「・・・カエル?」

私はそう言った。

「違うよ。私だよ私。ほら、もっと下見て。」

そう言われたので視線を少しずつ下に送るとそのカエルの帽子をかぶった小さい少女が座っていた。

「・・・・・・あなたは?」

「私は、諏訪子。この神社の神様だよ。」

「えっ神様!?」

私は体を起こし周りを見渡した。どうやらここは神社らしい。そして今私の目の前に居る金髪の少女。自分で神と言っている。
私をからかっているのか、または私は死んでしまって神に合っているのか。そのどちらかだなと思った。

「よかったねー早苗に助けてもらって。あんな人食い妖怪に一人で挑むなんて危険だよ。」

「早苗?」

知らない人の名前が出てきた。しかし、今の言葉上私はその早苗という人にあの後助けてもらったという事だろう。つまり私はまだ死んでいなかった。
・・・ということは。

「助けてもらったのは心から感謝するけど、起きてすぐの私に神様だなんて冗談は少しきついわよ。」

この諏訪子は私をからかって言ったに違いない。そう思った。

「私が嘘ついたって言いたいの?じゃあこれを見てもまだ言える?」

そう言うと諏訪子は手を一回パンと叩いた。すると、急に地面が大きく揺れ始めた。彼女がもう一度手を叩くとその揺れは益々大きくなっていった。

「どう?これが神の力だよ。でもまだまだこんな物じゃないよ!」

そう言って諏訪子は手を二回パンパンと叩いた。再び揺れが起きた。しかし、今度のは少し違った。この神社だけがグラグラと揺れ地面には大きな亀裂が走った。と思いきや神社が急に浮き出し地面と離れた。なんと神社が宙に浮いたのだ。
これには私も驚いた。地震を起こすだけでもまず不可能なのに地面を操って神社を宙に上げてしまうなんて。

「どう。これで私が神って信じる?」

諏訪子が得意げに言った。

「え、ええ信じるわ。」

正直、動揺を隠しきれなかった。まさか神が実在してしかもその神がこんな幼いような少女だなんて。
私が諏訪子に驚愕していると。奥から誰かが来る足音が聞こえた。その足音はだんだん大きくなり、私と諏訪子が居る部屋の戸を開けた。そこに立っていたのは青い髪をした諏訪子よりも背の大きい女の人だった。その女の人は諏訪子の前まで来るといきなり諏訪子の頭を一発叩いた。

「諏訪子!早く戻しなさい!何また勝手に地震とかやってんの。」

対応がどうみても母のような気がしたのではじめ私は家族か何かだと思った。

「痛いじゃん神奈子。この子が私を神って信じてくれなかったから。」

頭を押さえた諏訪子が言った。この女の人は神奈子と言うらしい。

「いいから。早く降ろしなさい。」

諏訪子は言われるがまま神社を元の位置に降ろした。すると亀裂の入った地面と神社が今度は結合しはじめ、最後には亀裂が入った形跡が全くないほどきれいになった。

「あんた、起きたんだね。私は神奈子。私も諏訪子と同じ神様だ。」

今度は疑いはしなかった。神が一人居るならほかに至って全然おかしくはないのだから。しかし、これで諏訪子とこの人が家族ではないということが分かった。

「私は桃青區璢美。この世界には前に迷い込んで入ってきたわ。」

そう言った瞬間、神奈子と諏訪子の顔が一瞬変わったように見えたがあまりにも一瞬だったのでその事について聞くことが出来なかった。

「へー外の世界から来たんだ。実は私たちも元は外の世界に居たんだけどこの神社ごとここに来たんだよ。」

諏訪子がそんなことを言った。

「しかし、驚いたよ。早苗が帰るの遅いから何やったのかと思えばあなたと傷だらけの子を早苗と菫子が背負って運んでくるから。」

私はその時、今までに何があったかを瞬時に思い出した。そして頭で考えるよりも早く声が出ていた。

「玲は、玲は大丈夫なの!?」

私は二人に言った。

「あの子は別に死んではないよ。でも傷が結構深い。意識も戻ってない。今早苗が奇跡を呼んで治そうとしているが、まだ数日はかかりそうかな。」

それを聞いて私は安堵した。何より玲が死んでない事が嬉しかったからだ。

「あの、その早苗さんって人髪の毛が緑色の人なのかしら。」

私が聞くと二人は頷いた。私を助け、私が気絶する前に見た人が早苗という人らしい。私はその人に会いたいと言ったが、彼女が奇跡を呼ぶときは誰かに邪魔されると集中できなくなり意味がないということなので玲の治療が終わってから会いに行くことにした。
菫子の事についても聞いたが彼女は一度自分の世界へ帰っているらしい。次来る時はこの神社に来ると言ったらしいので私は玲が意識を取り戻すまで、この守矢神社に留まらせてもらうことにした。


はらかま #52 - 16.06.28 22:59
―博麗神社 道中― 桃青 區璢美

私と玲は菫子が言った「霊夢」という人の元へ行き今起こっていることについて聞こうと、一本の獣道を通っていた。
霊夢が住む神社、通称「博麗神社」はこの世界の先端にあるらしく、菫子の世界とこの世界の境界線に建っているらしい。その為、もうかれこれ一時間以上は歩いていた。

「博麗神社ってまだ先なんですか菫子さん。」

私はこうみえても忍びなので体力には自信があった。なのでこれくらいの道なんて造作もないのだが、私の弟子はそうはいかないらしい。へとへとになり音を上げていた。

「もう少しだから、頑張って玲。」

菫子がそんな気の利いた言葉を言ってくれた為か、玲も再び歩き出した。

「ここの辺りは妖怪が出るから気をつけてね。」

気の利いた言葉を言ったと思いきや、そんな言葉を放った為玲が再び座ってしまった。
疲れたからではない。怖いからだ。

「よ、妖怪が出るんですか!?」

それを聞いた菫子の口が一瞬だけ動いたのを私は見逃さなかった。私はその動きだけで、この後菫子がなんて言おうとしたかを察した。

「そう。しかも人食い妖怪がね。・・・そうそう。この辺りは昔から何人もの人間が妖怪に無残にも食べられてるらしいわ。玲も妖怪に捕まったら、生きたまま噛み千切られちゃうかもね。」

「い、嫌です嫌です!私まだ死にたくないです~。」

そう言って玲はその場にぺたんと座って泣いてしまった。

(菫子も嫌なことを考えるわね。)

私はそう思ったが、もし私が菫子でも同じ事をしたかもしれないとも同時に思った。

「ごめんなさい。ちょっとからかってみたかっただけだから。そんなに頻繁に妖怪はでないから大丈夫よ。」

そう言って菫子は座っている玲に手を差し伸べた。


しかし・・・

「っ! 危ない!」

そう言って私は二人に叫んだ。
それを聞いた二人は見るよりも早くその場から離れた。
その刹那。二人が居たところを青白く光った玉が突っ切った。その玉はいかにも二人を狙ったかのような軌道で突き進んでいたため私は瞬時に気づいたのだ。二人を当て損ねた玉はそのまま突き進み一本の木に当たった。ドーンという大きい音とともにその木は粉砕した。
私たちは周囲を見渡し誰か居ないかを確認した。すると、道の奥から人とは思えぬ姿の生き物が草むらから出てきた。

「あれが、妖怪なのかしら?」

そう訪ねると菫子は頷いた。

「この威力の攻撃をするなんて・・・少し危険ね。」

妖怪はゆっくりと私たちの元へと歩き出した。目は赤く、私たちの瞳を強く射貫いていた。
殺す気だ。私はそう直感した。

「師匠!どうしましょう。あの妖怪凄い目してます。」

玲が涙目になりながらも小声で言ってきた。

「菫子!こういう時どうすればいいの。」

私がそう言った瞬間。目の前に居た妖怪の姿が消えていた。目を離したのはほんの数秒だったのに。妖怪は私たちの視界から居なくなっていた。

「・・・・・・・・・っ!玲!後ろ!」

一番はじめにに気づいたのは菫子だった。しかし、その警告はあまりにも遅かった。
その妖怪はあの一瞬で私たちの後ろに回り玲の体に刃の如き鋭利な爪を振り下ろしていた。


声が出なかった。私はただ目の前で起こった光景に目を送ることしか出来なかった。玲の体には深い傷が刻まれ空中に玲の鮮血が飛び散った。
玲はその場で倒れた。体からどんどん血が溢れている。このままでは多量出血で死んでしまうかもしれない。いや、もしかしたら今の攻撃が心臓に届いていてもう死んでいるかもしれない。呼吸の有無はここからでは判断できなかった。
その妖怪は倒れた玲を見て突如謎の奇声をあげた。あの妖怪なりの喜びなのかもしれない。妖怪は玲の体を食べようと手を伸ばした。
この時、私の心の中は一つの感情で埋め尽くされていた。恐怖でも悲しみでもないそれは・・・


『怒り』だった。


妖怪が玲に手を伸ばしていた。しかし、玲の体に手が触れるよりも早く、その妖怪の手には一つの手裏剣が刺さっていた。
コンマ一秒の出来事で何が起こったのか理解していない妖怪だったが、数秒後やっと理解したらしく手から溢れる自らの血を見て発狂した。
何が起きたのかを知っているのは私しかいない。なぜならその手裏剣は、私が刺した物なのだから。
私は休むことなく妖怪に向かって投げ続けた。手裏剣、クナイを数え切れないほど。
この武器は全て私の頭の中に入っていた物だ。私の能力は物質を絵や文字、記憶にする能力。この武器は私が旅に出る前、家にあった物を記憶として頭に入れていた物だ。
私は頭の中にある武器を全て出し尽くした。もう幾つもの手裏剣やクナイが刺さった妖怪だがそれでもまだ息があった。その妖怪は私を睨みつけると、また一瞬で姿を消した。
周囲を見回した私だが、三百六十度。妖怪の姿はなかった。
この時、私は自分でも最悪と思ってしまうほどの失敗を犯していた。三百六十度見回しても居ない。ではどこに消えたのか。そんなの決まっている。上だ。
その妖怪は私の真上から私を狙って落ちてきた。このまま首を切るつもりなのだろう。
不意を突かれた私は動くことが出来なかった。武器も全て使ってしまった。もう何も出来ない。

(死んだら、玲に会えるのかしら。)

そんな事をふと思った。私は目を閉じて死を覚悟した。

目を閉じて数秒たった。だが自分自身の体には何にも感じていない。切られた感覚もなかった。私はゆっくり目を開けてみた。
目の前にはさっきまで妖怪と戦っていた獣道が広がっていた。ふと見ると少し先にはあの妖怪が地面に倒れていた。もう動いては居ない。多分死んでいるのだろう。でも何故。私はあの時確実に死ぬと思った。しかし、目を開けるとあの妖怪が何者かに飛ばされたかのように私の少し先で倒れている。私はその場で考えようとした。
だが、どうも頭が働かない。それに力が体に入らない。周りを確認しようとしたとき、私はそのまま地面に倒れてしまった。力の使いすぎによる一時的な気絶である。

気絶する直前、私の視界にはぼやけながらも緑色の長い髪をした少女がいた。


はらかま #51 - 16.05.02 00:06
―香霧堂― 霧雨魔理沙

私は菫子を探す前に少し寄り道をしていた。こういう外の世界に関係している物や事件が大好きな奴が一人。
そいつは人里離れた場所に店を構え、営業しているのかしてないのか分からない程乱雑に置かれた得体も知れない器具に囲まれて生活している。
その店の名前は香霧堂。そして、その店主は森近霧之助。
私が小さいときからよく知っている奴ではあったが今でもあいつの事がよく分からない。しかし誰よりもあいつの事を知っている自信はある。あいつと一番長くいる奴なんて私ぐらいだから。
そうこうしている内に香霧堂に着いた。

「よお香霧。ちょっと話があるんだが。」

古くさい扉を開け、私は目の前で暢気に本を読んでいる男に話しかけた。

「なんだい魔理沙。また何か捜し物でもあるのかい。それとも八卦路が壊れたか。」

目は本を見つめ続けながらも香霧は私に言った。いつものことだ。

「どっちでもないぜ。今いろんなところで起こってる病の話なんだが――」

私が香霧に話そうとした瞬間、私たちの目の前で急に窓が破壊された。それも何かを投げ入れて壊したらしい。

「またか。もういい加減やめてほしいよ。」

窓を壊されたというのに香霧はいたって冷静だった。
私は投げ入れられた物を見た。それを見て私は、前にもこんなことがあったような気がしたなと思った。投げ入れられた物は天狗が発行している新聞。しかもそこには、〔大流行恐ろしい病に注意」と書かれていた。天狗の号外は毎回情報が遅いか内容が滅茶苦茶なことが多いが今回は早かった。

「そうだぜ香霧。私はこれが言いたかったんだ。」

床に落ちた新聞を手に取り香霧の前に叩き付けた。やっと本から新聞に目を向けた香霧に今までのことを話しはじめた。

「そうか。僕は全然外に出ないから外でそんなことが起こっているなんて思ってもみなかったよ。」

「だろ?外の世界に詳しい香霧なら何か知ってるかって思ったんだ。」

私は香霧の回答を待ちながらも。自らの焦りを沈めるため、置いてあったお茶を取り出した。もちろん一番高そうなのを。


はらかま #4 - 16.01.26 17:55
―人間の里― 桃青 區璢美

菫子の話を聞き続けることはや一時間。話が終わった。そして、話に夢中になっていた菫子も周りの光景に気付き話しかけてきた。

「そういえばどうして私たち以外に人が居ないの?」

「それは、私にも分からないわ。私たちが来たときにはもう誰も居なかった。」

隣で玲も頷いた。

「そう…不思議ね。いつもなら人が沢山居るのに。」

私たちはここに着てまだ間もない。ここのことは確実に彼女の方が知っているはず。しかし、その彼女も分からないらしい。

「異変とかなのかしら。」

菫子がぼそりと言った。

「異変?何ですかそれ?」

玲が首をかしげて問うた。

「この幻想郷で時々起こる事件のようなものよ。例えば、昔空が急に紅くなったり春なのに雪が降ったりなんて事があったって霊夢さんが。」

知らない人が出てきたので再び聞いた。

「霊夢ってだれなの?」

「霊夢さんはこの幻想郷の端にある博麗神社の巫女で異変はほぼあの人が解決しているの。」

「そんな人が居るのですね。」

「じゃあその霊夢って言う人のところへ行って聞けばいいんじゃないかしら。」

私は言った。

「そうね。それじゃあ今から行きますか。」

菫子は私たちに言った。私も霊夢という人に会ってみたかったので、私たちは菫子に付いて行くことにした。


はらかま #4 - 16.01.21 19:00
―人間の里― 桃青 區璢美

渡しと玲は沢から歩いて里と思しき所に着いた。
しかし、そこには人っ子一人居なかった。誰かが居た形跡はあるが肝心の人間が何処にも見当たらず風の音だけが里を通り抜けている。

「おかしいですね。家は沢山建ってるのに。」

声が僅かだが上ずっていた。玲は相当の臆病で夜中に一人で歩く事が出来ないくらいだ。
こういうのを見ると少しおちょくってやりたくなるのが人間の性だ。私は玲の耳元で小さく言った。

「こういう人間とかがもと居た場所って幽霊とかがよく出るって言うわね。」

玲の体がゾクッとしたのが分かった。

「そ、そんな事言わないで下さいよ~。」

ザザッ

「ひゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」

玲の発言の後後方の草むらかが険しく揺れ、玲が叫喚した。
私はその草むらをじっと見た。

「まさか…本物?」

「…ふーやっと出られたわ。もう服がめちゃくちゃね。」

草むらからは見かけない物を目にはめた一人の少女が居た。

「……あなたは?」

私はその少女に尋ねた。

「え、私?あっ、私は宇佐美菫子といいます。え~とあなたは?とそこの怯えているように見える人は?」

その菫子という少女は私の後ろに居た玲を見て言った。

「私は桃青區璢美。そしてこのうずくまっているのが弟子の河合玲です。」

「桃青と河合………もしかしてあなた、松尾芭蕉ですか?」

私は強烈に驚いた。驚きすぎて一歩後ずさってしまうほどだった。
私は俳句を書くときの名前として『松尾芭蕉』と使うときがあった。しかし、この名前は私と玲しか知らないはずだ。なのに彼女は確かに言った、松尾芭蕉と。

「どうしてその名前を?」

私は菫子に言った。

「私の居た世界ではあなたは凄く有名な俳人で教科書にも載ってるくらいの人よ。それにそっちの玲っていう子も有名よ。でも名前は河合曾良っていう名前だけど。」

その後私は菫子の居る世界、そしてその世界の私はどのようなものかを聞いた。



「要するに菫子の居る世界では私と玲は芭蕉と曾良という名前で何故か男になっていて、二人とも幾つもの俳句を残しているのね。」

「そういう事。でも驚いたわ。芭蕉と曾良が女だったなんて。」

「それはこっちの台詞ですよ。どの情報から性別が変わるんですか。」

正気を取り戻した玲が菫子の話を聞いて言った。
だがまぁしかし、芭蕉という名前は少し男みたいな名前かもしれない。私は密かにそう思った。

「ところで菫子さん。」

話が一段落した後、玲が菫子に向かって聞いた。

「その目にかけているものは何ですか?」

「あーそれは私も思っていた事なのよ。菫子。それ何なの?」

玲は私と同じ事を考えていたらしい。菫子は目に謎の器具をずっと付けており本人は何も言わなかった。たぶん菫子の世界では普通な物なのかもしれない。

「あーこれ?これは眼鏡といって目が悪い人がつけるものよ。私の居た世界だと普通にあるわね。」

そう言いつつ菫子はその眼鏡たるものを外し玲に渡した。よく見るとそれにはガラスのようなものが付いていた。
玲はそれを目にかけた。すると、

「うわっ!」

玲は直ぐに眼鏡を外すと目をこすった。

「世界がぼんやり見えました。菫子さんはこのようなもので良く普通にしていられますね。」

「玲は目が良いって事よ。」

菫子が言った。
成る程。目が悪い人はあの器具を付け、良い人は付けないのか。
………
私は、菫子の居た世界をもっと知りたいと思った。

「菫子。私にもっとあなたの世界の事を教えてくれないかしら。」

その後私は菫子の話に夢中になった。今私たちの周りに誰も居ない事など忘れて。


はらかま #4 - 16.01.18 16:14
―永遠亭― 霧雨魔理沙

私は神社を後にすると、紫と共に永遠亭へ向かった。
迷いの竹林を彷徨い続けると、一見の建物が見える。それが永遠亭だ。いつもは時々来る患者の治療などをしたり、餅をついたりしている。
その家に住む『八意永琳』は元々は月に住んでいた奴らしいが、月の姫『蓬莱山輝夜』と共に重い罪を犯したらしく、今はこの幻想郷でひっそり暮らしている。
月の医師だった永琳は、幻想郷一の医師と言ってもいい。どんな病でもたちまち直す。私も幾度となく世話になっている。

そんな永琳だが、

「これは私にも分からないわ。」

匙を投げていた。
永遠亭に着いた私と紫は永琳に事情を説明し何かいいものはないかと聞いたが、永琳でさえ分からないという。

「ただ…一つ言える事があるわ。」

永琳が言った。

「なんだよ。」

私はそのまま返した。

「それはね………幻想郷の住人ではない誰かがこの病の菌を持ってきたという事よ。」

「それは知ってるし、前回の話で言ったぜ。」

場が一瞬でしらけた。

「そ…そう。」

永琳はなんだか悲しそうだった。

「でも、幻想郷の住人じゃない奴なんて、最近入ってきたのは菫子ぐらいだぜ?なのにあいつが来ても何も起こってないじゃないか。」

「そうね…ならその子に直接聞こうかしらね。」

私が言った後に紫が言った。

「でも、あいつ曰く寝てるときしかこっちに来れないって言うぜ。しかもあいつがいつ寝てこっちの世界に来て、何処にいるかも分からないじゃないか。」

「分からないなら探せばいいじゃない。」

紫は何常識的なこと聞いてんのと言わんばかりの口調で言った。

「という訳で、魔理沙。菫子を探してきなさい。」

「私だけかよ。紫も一緒に探してくれよ。」

「嫌よ面倒くさい。それに、私はやる事があるのよ。」

紫の言うやることが何かは知らないが、こういう面倒な作業を私一人にやらせる事に少々むかついた。

しかし、

「早く探して解決しないと、霊夢が危ないわよ。」

私は霊夢を思い出した。
早くこの病の謎を解き、霊夢を助けないと危険だ。

「…分かったぜ。でも紫。お前も出来るなら探してくれよ。」

私はそう言うと、ほうきに乗り菫子を探しにいった。
私は気付いていた。あの時、紫の手がほんの少し震えていたことを。


はらかま #4 - 16.01.15 19:07
―玄武の沢―

閑さや
岩にしみ入る
蝉の声

そんな句を読み上げたのはいつだったか……。
あの句はあそこでしか感じられなかったけれど、成る程…ここでも合いそうだ。
夏らしい暑さと日差し。時々吹く風が体を通り抜ける感じが心地いい。そして、四方八方から聞こえる蝉の声。いつもは騒がしく感じる鳴き声もここでは一つのメロディのように聞こえる。全てが理想的な情景だった。

(こんな世界、あっちの世界ではなかったわね。)

そう感慨にふけながら、私『桃青 區璢美(とうじょうくるみ)』はその場を後にした。

もともと、私はこの幻想郷の住人ではなく、外の世界からきた俳諧師である。
自分の住んでいた家を捨て、自由気ままに旅をしていたら気が付けばこの世界に居たのだ。
俳諧師と言っても、私は忍びでもある。私が生まれたところでは忍びが多く居たらしく、私の家族も忍びの一族だった。小さいときから色々な訓練をさせられ娯楽を楽しむのも禁止させられていた。
しかしそんな私の唯一の楽しみが、物事や情景を言葉にして残す事だった。
家の庭に鳥が止まればその光景を五、七、五の俳句にした。どんな些細な事でも私は俳句にして楽しんだ。
しばらくして、とうとう自由になる事ができた。家族の下を離れ、一人でひっそりと暮らしていた。
ある日、私は一人の俳人に出会った。その人は、俳句を書く旅に出ていると言った。私はその自由な生き方に憧れた。私もあの人のように旅に出てみたいと思った。
そして、私は直ぐに旅の準備をし、住んでいた家を他の人にあげた後旅に出た。その旅には『河合 玲(かわいれい)』という弟子も同行した。
余談だが、玲は私が本当は忍びだということは知らない。
道中は険しくも楽しいものだった。その地域で何十、何百と俳句を作った。色々な人との出会いも会った。
そんな中、私はある能力が開花した事に気が付いた。
それは、『想像を創造し創造を想像する』というものだった。
これは、頭の中で考えたものや紙などに書いた絵や言葉をそのまま物質として出す(召還する)というものだ。更に元からある物質を紙や他の物質、更には自らの頭の中に縮小し、絵か文字として(頭の中に入れる場合は記憶として)入れることも出来る。勿論、その入れた物質は再び出す事が出来る。
私は、その能力を存分に生かそうとした。
しかし、その能力が開花してすぐにこの世界へと来てしまい、今に至るという事である。


「ほんとに気持ちいいわ。……このまま眠っちゃおうかしら。」

重くなってきたまぶたを閉じようとした瞬間

「師匠。こんなところで寝ないで下さい。」

たたき起こされた。
私は、眠いのに起こされるというのが大嫌いだ。その為、私は相手を確認せずに拳を振り上げた。

「痛ッ!…酷いですよ師匠。」

私はゆっくり振り向くと、其処には弟子の玲が居た。

「あー、ごめんごめん。玲じゃないと思ったのよ。…じゃあおやすみ。」

そう言って再び瞳を閉じようとした。

「駄目です。ここで寝るぐらいならもう少し先にある里の宿に泊まりましょう。」

いま私たちが居るところから少し歩いていくと、小さな里があるらしい。玲はそこまで早く行きたいようだ。

「はいはいはい。分かったわよ。一回言うと聞かないんだから玲は。」

そうふてくされたかのように言うと、私は立ち上がって、玲と一緒に里までゆっくりと歩きだした。


はらかま #3 - 16.01.14 00:02
最近、人間の里を中心に謎の病が流行っている。
それは、発症して直ぐ高熱が体を襲い、手足が震え、歩く事もままならない程らしい。他にも、ある人は腹痛を訴えたり、またある人は何度も嘔吐を繰り返した。そしてその病のせいで何人もの人が命を落とした。
しかも、謎の病という事だけあって明確な治療法は無い。ただ安静にさせるしかないのだ。
私はまだこの病には罹っていないが、私もいつ罹るか分からない。
この状況を知らせる為、私は博麗神社に向かっていた。

神社までの長い階段を走って上ると、鳥居が見えた。
いつもならこの博麗神社の巫女『博麗霊夢』が神社の縁側で休憩中と装い緑茶を啜っているはずだ。
しかし、今日はその縁側に霊夢は居なかった。
縁側に居ないとなると、神社の中でくつろいでいる可能性が高い。

「こんな一大事って時にあの巫女は…。」

そう吐き捨てるように言うと私は神社の脇を回り、声もかけずに襖を開けた。

一瞬、私は目の前の光景を理解できなかった。
あのタフで、自己中で、散歩感覚でありとあらゆる異変を解決してきたあの博麗霊夢が床に倒れていたのだ。

「霊夢!」

倒れている霊夢を抱きかかえると体中が熱くなっていた。額に手を当てると触れないほどの熱を出しおり息も荒くなっている。更に手足も震えている。
間違いなく人間の里で流行っていた病と同じだった。

「……あ、魔理沙。来てたのね…。あれ、なんで私倒れてるの?なんか力も入らないし…。」

霊夢が意識を取り戻すと同時に霊夢は私に言った。どうやら倒れたときの記憶が無いらしい。それだけ急にきたのだろう。

「喋るな。今布団出すからな。」

そう言って私は直ぐに布団を敷くと其処に霊夢をねかせた。

「…凄い熱ね。こんなの初めてだわ。」

「そうだな。…その病だが、それが今人間の里を中心に大流行しているらしい。」

そう言うと私は霊夢に発症の初めと今の現状を続けて言った。
発症が見つかったのは今から約一週間前。人間の里に住んでいる人間が道端で急に倒れ、そのまま近くの医師に相談しにいった。その医師は里では中々の医師らしくてみんなからの評判も良かったらしい。しかし、その医師でさえも分からなかったという。

「そう…誰も分からないのね。」

霊夢が小さな声で言うと同時に、私と霊夢以外の声が部屋に響いた。

「そうね。これは、異常な事だわ。」

空間が横に裂けたと思うと中から最強の妖怪『八雲紫』が現れた。

「やっぱり、これは異変なのか?」

私は紫に言った。

「いいえ、異変じゃないわ。『異常』と言ってるでしょう。」

紫の声からは僅かだが焦りを感じた。紫でさえ焦っているのだ。異変なんかとは比べ物にならないのだろう。自然と私も焦っていた。

「そもそもね。この病は今現在は幻想郷にきてはいけないの。」

「……つまりそれって。」

「この病は現在も外の世界で流行っている病という事よ。」

幻想郷には外の世界で忘れ去られた物や妖怪、生き物が流れ込んでくる仕組みになっている。それなのに、今現在外の世界でも流行っている病が幻想郷に流れ込んできたという事は……考えられる事はただ一つ。

「「外の世界の人間がその病の菌を何らかのやり方で幻想郷に持ってきたって事…。」」

私と紫は同時に結論を述べた。

「魔理沙。私と一緒に永遠亭に来なさい。」

紫が私に言った。
確かに、月の医師の『八意永琳』ならこの病の治療法が分かるかもしれない。

「分かったぜ。…霊夢はここで安静してろよ。」

「…分かってるわよ。」

私と紫は共に迷いの竹林を目指した。

(頑張れよ霊夢)

私は心の中で祈った。


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