山頭火が誘う亡き妻との思い出の旅

映画を見てから本を読むか、
本を読んでから映画を見るか。

私は後者の順でこの作品に触れた。

普通本は映画の原作であることが多いのだが、
「あなたへ」の場合、
映画が先にあって、
脚本を原案として書かれた小説である。

したがって、
ストーリーはイコールではない。
映画にはない場面もある。

主人公は旅の途中、
杉野という元国語教師と出会う。
彼が唐突につぶやく種田山頭火の句は、
主人公の旅を導く重要なモチーフとなっている。

「分け入っても分け入っても青い山」
「風鈴の鳴るさへ死のしのびよる」
「それもよからう草が咲いてゐる」
数えてみると16の句が作中に散りばめられている。

脇役ではあるが杉野という癖のある元教師に影響され、
私もこれを機会に山頭火を読んでみたくなった。