たましいが読む本

　
虐待を受けて育った人は、
普通の人とは違う世界に住んでいる。

そこから見える世界はまったく別のものになる。

大多数の普通の人々が作った歴史や哲学、
思想など、
すべてが変わる可能性がある。

そういう、
世界や存在の新たな広がりの可能性を感じる、
と著者は書いている。


「被虐」(本書中、
虐待経験者をこう呼んでいる)にとっては、

苦しいだけの、
義務だけの、
悲惨な人生。

自分を責めても、
世界を責めてもわかってもらえず、
どうにもならない。

出られない箱に入り、
出してくれと叫びつづけ、
出られないことに絶望するのだが、

箱の鍵は自分がかけたのであり、
それはいまも手に持っているのだ。


しかし、
鍵を開け、
外に出ることが最終目標ではない。

もっと遠くを見る。

そういうことか。

　
　

読後、
ことばは、
こころの薬になる、
と再確認する。


「辺縁」という場所を明確に示されたことで、

自分にも、
生きていてもいい場所があったのだ、
という発見、
その驚きを、

たましいが感じているようだ。


被虐である自分のこの生命の、

与えられた残りの時間を、

顔を上げて、
前を向いて、

歩いていこう、
という気持ちになった。