生死を分けたリーダーの判断

ここに紹介された事故は、

大量の犠牲者を出した未曾有の登山事故として有名です。

著者は遭難した登山隊の１つに参加していたジャーナリストです。

ですから、
とても迫力のある本です。


実は、
このときに、
一人の犠牲者も出さなかった登山隊があったのです。


この登山隊のリーダー（デイヴィッド・ブリーシャーズ、
著名な登山家・映像作家）は、

下山刻限のリミットを事前に決めていて、
たとえ登頂目前でも引き返すことにしていたそうです。

登山の途中で下を見ると、
多数のパーティーが後に続いていることを知り、

帰り道が混雑して、
リミット刻限に下山出来ないと判断して、
その場から下山を開始したのです。


先頭を切っていたので登頂は確実だったにも関わらず、

エベレスト登頂の栄誉の誘惑に負けずに自らが定めた決め事に従ったのです。

後続の登山隊から多くの犠牲者を出したことからも、

このリーダーの判断の正しさが証明されています。

この隊は、
遭難救助において大量の酸素ボンベを提供しました。

この支援がなければ、
遭難はもっと大規模になっていただろうと思います。


渦中にいると、
冷静な判断を下すことは難しいです。

平素に、
決断の約束事（たとえば撤退の基準）を定めることの大切さを教えてくれます。