問うべきことは「国が自分に何をしてくれるか」ではなく「国の未来のためにあなたは何ができるか」である

これまで日本を支えてきた政治・経済・社会システムは今や制度疲労を起こしてさまざまな矛盾を内包するに至っている。
にも関わらず古いシステムに守られた旧世代は改革を拒み、
いっこうに矛盾を是正しようとしない。
著者は避けて通ることのできない社会保障や税制、
医療、
教育、
エネルギーなどの問題の本質を明らかにし、
それらを世代間対立の視点から再整理した上で、
具体的な解決策について言及している。

改革を成功させるために、
最も人数が多くて影響力の大きい30代を具体的な行動へとたきつけ、
同時に旧世代にはかわいい子供のために身を切るべきだと迫る。
けっして悲観主義に陥らないで、
むしろピンチを将来のビジネスチャンスと捉える前向きな姿勢はいつもと変わらない。

現場のリアリズムに立脚した著者の主張には隙がなく、
ときどきユーモアも交えた文章は小気味がいい。
複雑な問題も分かりやすく説明してくれるのでまるで名演説を聞いているようだ。

団塊世代と団塊ジュニアのどちらにも属さない中間世代である著者の役割は、
一言で言えば、
若い世代を啓蒙し上の世代を説得することである。
幕臣でありながら時代の変化を敏感に察知して、
倒幕派にも理解を示した勝海舟さながらである。

そんな著者の問題意識は「すべては『子どものために』」という言葉に集約される。
本書のあとがきには「すべては『子どものために』に込めた私の思いは、
こうした問題を正反合できる唯一の方法論は、
将来世代、
子供たちの時代のために現世を生きる私たち全員が犠牲になること、
短期的な利益や過去へのノスタルジーを捨て去ることであり、
『どうすることが子どもたちの時代にとって本当にプラスになるのか』という価値観で日本の政治、
経済、
社会が本気で動きだすことだった」とある。
この著者の思いに多くの日本人が共感するのではないか。
若い世代だけではなく、
すべての世代に読んでもらいたい好著だ。