古典、歴史を学ぶ人達には必携の書

有職故実に関する優れた書物は数多く刊行されているものの、
取り分け装束にのみ焦点を絞り、
解り易く解説した本書は非常に有用、
尚且つ価値が高い書籍である。


本書は「男装」「女装」「武装」の三章からなるが、
「図典」と称するだけあって一目で見て理解し易いように多くの挿絵を載せている。

また、
単に装束の全体像や用語の説明のみならず、
色目や文様等も細かく解説した上で一つの表に取り纏める等、
読者にとっても実に有難い工夫が見られる。

巻頭には色の種類や重ねの色、
更には組紐についても鮮明な写真を掲載している為、
当時の装束の雅さをイメージ出来ると同時に「日本の色」の美しさを改めて知る事が出来たし、
また、
巻末でこれらの装束を身に着けた時の様子が絵巻からの抜粋と実際のモデルを使っての写真にて紹介されているのも面白かった。

更には矢や太刀の種類も図解しているので、
装束のみならず工芸品に興味のある方の期待にも応えてくれるのではなかろうか。

文章、
並びに全体の構成も実に丁寧で解り易い。


古典文学や歴史に携わっていると、
必ずこうした装束の知識が必要になる。

そして、
こればかりは文章だけで綴られても中々想像が難しい為、
とにかく「目で見る」事に徹底的に拘った本書は貴重であり、
古典や歴史、
或いは日本美術を学ぶ方達は是非とも手元に置いて頂きたい。

確実に役立ってくれるであろう。