行動療法の最高水準

著者を初めてテレビのドキュメンタリー番組で観たとき、
指導を受けた子どもがみるみる変わっていく様子に「こんなことができるセラピストがいるのか」とびっくりしました。

発達障害や自閉症の子を、
幼児期から成人までの長期間にわたって、
数多く指導してきた著者の、
日々の教育相談の内容や進め方について、
これまでの著作のなかで一番詳しく書かれている本だと思います。

経験にもとづく深い見通し、
大胆にして緻密な技法の数々に、
ただただ圧倒されます。


「修学旅行に行くのがこわい」「字を読むのが苦手」「自己主張ができない」「超ネガティブ発言＆ぼやき癖」など、
医師も教師も保護者も手をつけかねて、
諦めたり、
様子見という名の放置をしたりしてしまうような問題に、
具体的で鮮やかな解決策を提案しています（しかも当の子どもにとってはスモールステップで面白いタスクだというところがまた素晴らしい）。

全編を通して笑える箇所、
ホロリとなる箇所もたくさんありますが、
他の方も書かれている通り、
とる手立てを知らない現場の教師には厳しい見方も示されています。


保護者にも教師にも、
そして医療・療育関係者にも、
ぜひ読んで欲しい本です。

ただ、
行動療法といってもこの水準の指導をできるセラピストが日本にどれくらいいるのか、
と考えるとため息が出ます。