「あなたを大切に思っています」。この発信がユマニチュードの極意だ

　認知症のケア手法としてユマニチュード注目が集まる。
これは、
ケアをする人も受ける人も良かったと感じられる関係をつくり出す。
高齢者を個人として尊重し、
能力や状態を観察し、
見つめ（「見る」）、
話しかけ（「話す」）、
触れて（「触れる」）、
立つことや移動をサポート（「立つ」）することで、
行動の抑制や強制を行なわずに、
受ける人の改善を目指すものだ。


　この著作は、
第１章でユマニチュードとはなにか、
第２章でユマニチュードの基礎となる４つの柱、
第三章で心をつかむ５つのステップ、
第４章でＱ＆Ａとコンパクトに紹介し、
入門書に相応しい分かりやすいテキストである。


　例えば、
第２章では、
ユマニチュードの４つの柱である「見る」、
「話す」、
「触れる」、
「立つ」という柱ごとに、
ケアする場面でありがちで何気なくしている”害になる例“との対比しながら、
イラストを豊富に取り入れて分かりやすく解説をしている。


　４つの柱のひとつ・「見る」では、
ベットに近づくとき、
相手とアイコンタクトとりやすい角度を探しているだろうかと指摘する。
背後から近づいては、
びっくりさせ、
構えさせてしまう。
こんなときは、
相手の視界に入るように動線を描きながら近づき、
相手の視線をとらえて顔を動かすという。
車いすの人、
徘徊している人、
食事の介助のときなど具体的な場面でユマニチュード的な見る技術を提示している。


　また、
立ち上がる方の介助で、
腕を上からつかむのではなく、
下から両腕を使い、
優しくささえる。
５歳の子の力以上に使わないなど、
一つ一つが納得できる言葉で表現されている。


　「あなたのことを、
私は大切に思っています」。
ケアをする人が、
ケアを受ける人に、
こんなメッセージを常に発信すること。
これがユマニチュードの極意である。
ケアの専門家だけでなく、
介護する家族にも読んでほしい、
ヒントが満載の著作である。