繰り返し読むたびに新しい発見のある暖かくて深い名著

この書物は、
放送大学で大人気だった講義の印刷教材が叢書化されて新しくなったものです。
本文の内容は同じですが
印刷教材よりも本のサイズが少し小さくなり、
ページ数が多くなり、
活字は大きくなっています。

そのため、
より読みやすく、
持ち歩きやすくなった気がします。
また、
うしろに放送大学教授の佐藤康邦先生と、

東京大学大学院准教授の榊原哲也先生の解説が新たに付されています。
それぞれ、
とってもいい解説です。

佐藤先生の解説には、
「放送大学では、
先生は学生たちから慈父のように慕われ」ていたことが、
エピソード
とともに語られています。
（私も、
渡邊二郎先生ご逝去の報に涙を流した学生のひとりです。
）また、
榊原先生の
解説では、
「世界を見ることは自己を見ることであり、
自己を見ることは世界を見ることである」という「哲学上の根本洞察」と、

「意味と無意味が力動的に交錯する世界の中で他なるものの媒介を経ながら自己を実現してゆくのが人間である」という「世界観・人間観」が
渡邊二郎先生の哲学の「核心」であることが述べられています。

本文は、
経験、
時間、
境遇、
遍歴、
自己、
生き甲斐、
仕事、
孤独、
愛、
他者、
世間、
運命、
不幸、
老い、
死の全１５章からなり、

どこをとっても、
また、
何度読んでも、
教えられ、
励まされ、
考えさせられます。
また、
何よりも著者の渡邊二郎先生の読者に対する
暖かい気持ちがこもっていて、
それが、
この本に、
独特の魅力を与えています。
渡邊二郎先生の本は、
専門書でも、
一般向けの本でも、

考え抜かれた上で、
とてもわかりやすく読者に親切に書かれていると同時に、
内容が高く深くて、
何度読んでも新しい発見があります。

この本も、
これから、
古典として残ってゆく本だと思います。