本来の価値を損なわない、素晴らしい御伽噺としての古事記
古事記というのは、
ユダヤ教やキリスト教の旧約聖書、
インドのリグ・ヴェーダやヴァガバッド・ギーターのように、
神話の裏側に偉大な教えを封じた民族の貴重な財産と思います。

しかし、
古事記は日本人の間に決して浸透しているとは言えません。
実際にも、
あまり読んだ人はいないでしょう。
その理由は、
古事記が天皇崇拝思想のように誤解されたり、
古代史として日本書記の方が正統と定められたという経緯もあるのですが、
実際には、
その読み難さが問題であると思います。
奇妙な長々とした単語の羅列としか思えない神様の名前が延々続き、
しかも、
それらの名前を注意深く見ていないと文章が分らなくなってしまうという配慮のない書き方の翻訳が少なくありません。

もう一つは、
露骨な性描写であったり、
男神や皇族男子は美しい乙女に対し何でもやり放題といった雰囲気のところは、
特にお子様には読ませにくいということもあります。

かといって、
それらの部分を削り取ってしまったら、
それはもう古事記でありません。

そこで、
実に1920年に書かれたものながら、
いまだ出版される鈴木三重吉さんの「古事記物語」を読みましたら、
その素晴らしさに驚き感動しました。
決して子供用ではありませんが、
小学校高学年なら十分に読める分りやすさと、
気品と躍動感、
そして風情のある文章で、
古事記を御伽噺のように面白くし、
しかも、
古事記の持つべき日本民族の深い記憶を揺り動かすような神秘性も失ってはいません。

大人が読むのでしたら良い現代語訳もあり、
私も7種類ほど入手しましたが、
本書の価値はそれらに優るとも劣りません。

本書によって、
多くの日本人が、
日本最古の神話である古事記を是非読んでいただければと思います。
古事記物語

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