全ての医師の役に立つ良書です。

　数十年間精神科医をしているが、
日常の診療の中で「皮膚の変化」について意見を求められることが少なくない。
「餅は餅屋」でも悪くはないが、
果たしてそれでだけで良いのか悩む場面も少なくない。
なぜなら、
急いで皮膚科を受診する必要があるか否かを判断しなくてはいけないから。
急を要する皮膚疾患であれば至急に、
そうでない場合には患者さんの都合に合わせて、
という振り分けは、
どうしても必要になる。
そのため、
元々の皮膚科への苦手意識もあって、
これまでたくさんの皮膚アトラスを買い求めたが、
私の要求に応えてくれるモノはなかった。
写真と疾患の解説に留まるモノが多く、
診断手順や治療法は書いてあるのだが、
急を要するか否かがわからない。
もちろん、
皮膚のアトラスだから皮膚科医向けだと思えば、
緊急性に言及する必要性はあまりないだろう。
皮膚科医ならば知っていて当然だろうから。
しかし、
少なくとも私にとっては大きな不満であった。


　が、
このアトラスは違う。
ぱっと見ための皮膚の状態をもとに、
類似した皮膚所見を示す疾患をひとまとまりにし、
それぞれに所見の特徴やその発生頻度（！）にも言及し、
そして緊急度を五段階で示してある。
これは非常に画期的ではないか。
編者の序には、
「皮膚科を専門としない医師が、
なんとか診断に到達する、
あるいは診断に近いところに到達するのを支援することを目的」とあるが、
まさにその思いが結実した感がある。
昨今の｢専門医｣ブームには少なからず疑問を感じるが、
エキスパートであるが故の視点だと思う。


　タイトルは「内科で出会う」とあるが、
別に精神科でも小児科でも、
診療に携わる全ての医師に、
あるいは医療スタッフに、
非常に有用なアトラスだといえよう。
しかも皮膚のアトラスとしては非常に求めやすい価格である。
是非、
ご一読あれ。


　ただ、
あえて個人的な希望を言えば、
あちこちの職場で参照できるような形、
電子書籍版があるとなお良いと思った。
毎日持ち歩くには、
それでも他のアトラスよりとてもましだが、
少しだけ重い。