水俣から学べることは多い

水俣病は世界的にもよく知られた公害だけれど、
本書によれば、
水俣病とは何か、
どれくらいの被害があったのかというのは実は定かではないそうだ。
なぜなら、
原因をつくったチッソはもちろん、
国も県も水俣病に対して積極的に取り組んでこなかったからである。
むしろ、
定義を狭め、
早く集結させることだけを考えてきたとういってよい。
水銀中毒で苦しんでいる人が目の前にいるのに、
なぜ、
そのようなことが起こるのか。
そこには経済成長のためには弱者を切り捨てるという国の姿勢がうかがえる。
これは何も日本政府だけのことではない。
カナダの水俣病は、
先住民が被害者であったため、
水俣病とは認められなかった。
インドのボパールで起きた化学工場の事故でも被害者は政治的に無力な貧しい人たちで、
国に捨てられた「棄民」である。
水俣病をはじめとする公害や環境汚染は、
経済や政治が絡んだ総合的な事象なのだというのが著者の見立てだ。
だから「水俣学」なのである。
いま日本は福島原発で揺れている。
責任はだれにあり、
どうやって被害者を救済するのか、
政府は問われている。
水俣のようにはならないとは思うものの、
責任のなすりあいが行われ、
救済が遅れるのではないかと心配だ。
政府には水俣から多くを学び、
同じ愚を繰り返さないでほしいし、
われわれも間違えないようにしたい。