弦楽四重奏の在り方を問う貴重な教科書。

　ご存知アマデウス弦楽四重奏団によるモーツァルトの弦楽四重奏曲全集。
アマデウス弦楽四重奏団は3人がウイーン育ちですが、
結成は1947年イギリスのロンドンです。
彼らの奏法がしなやかなウイーン風であるにもかかわらず表現は重厚でがっしりした印象を受けるのはそのせいでしょうか。

　このモーツァルトの弦楽四重奏曲に関しても、
甘ったるさは感じられず、
心の内面に切れ込む演奏です。
演奏テクニックだけ見れば現在のコンクールに毒された演奏家の方が数段上かもしれませんが、
楽曲に対する理解、
取り組みは別問題。
その意味でこの全集は貴重な教科書的価値があると筆者は考えます。

　ただし、
録音されたのは東京オリンピック（もちろん前回の1964年）の後ですから、
もう50年以上経っています。
現在の演奏家はアマデウスに直接教えを請うことはできませんから、
この演奏を貴重な教科書として、
自らの演奏スタイルを見い出すことができればいいなと思っています。