エネルギー政策の実務書

経済産業省の元官僚である筆者によるものだけあって、
オイルショック後のエネルギー政策の変遷や東日本大震災を契機とした優先課題の変化などが、
実務家の観点に徹して、
客観的に書かれており、
読みながら、
自分なりの考えを構築するのに役立ちます。
特に、
誤解を恐れることなく、
一定量の原子力子発電の再開が必要とされる背景、
電力システムにおける再生可能エネルギーの異端児ぶり、
さらには電力自由化への楽観的な見通しに対する懸念などが論理的に書かれています。


確かに電力自由化については一般的に誤解が多く、
通信の自由化と同じように思われているように思います。
インフラを整えてしまえば、
後はメンテナンスのみで、
ユーザー数を増やすことで規模の経済が働く通信とは異なり、
エネルギーの場合には、
インフラの投資だけだけに終わらず、
常に燃料を調達し、
発電所を稼働させる必要があり、
変動費の影響が大きく、
一概に自由化と競争により、
ユーザーがメリットを得られるとは限らないように思います。
それに、
エネルギーの場合はベストエフォートで良しとはなりません。


一つだけ残念だったのは、
技術革新についての考察がほしかったということです。
原子力の安全神話に替わるような技術革新って本当にないのか？電力システムって、
需要と供給を常に一致させる精緻なシステムが前提とのことですが、
本当にそうしたシステムでないと成り立たないのかなどがエネルギーの素人ながらに疑問に思うところです。