「Holy Grail」と「Nickels And Dimes」が秀逸。全体的にはバラつきあるも，ラップは相変わらずの存在感

どうも「Dead Presidents II」の印象が未だに強くて，ジェイ・Zには，ラップだけじゃなくてサウンドにもカッコ良さを求めちゃうんですが，それってHip-Hopファンとしては失格なのかもしれませんね。
でも，大きく出ましたね。
大憲章に聖杯ですか。
ジャケットも格調高いし，これは大作の予感が・・・・。

　で，いきなり来ました～！　ジャスティン・ティンバーレイクが切ないまでにひたむきにバラードを歌い上げ，ジェイ・Zは扇動的なチキチキ・サウンドでたたみかけるようにラップをかます「Holy Grail」。
美しい気品あるピアノを基調としたバラード部分も，ジェイ・Zがやると，何故か非情なストリートの現実を想起させるから不思議です。

　そして，21世紀の奇人Gonjasufi（ゴンジャスフィ）の摩訶不思議な曲をサンプルした「Nickels And Dimes」。
美しくも深い悲しみが漂い，修験者にも似たストイックな空気が漂うサウンドをバックに，グイグイとラップでたたみかけるジェイ・Z。
何ともシリアスでスリリングです。
この２曲は圧巻です。

さらに，甘美なメロディーに乗ってビヨンセがコーラス・パートをしっとりと歌い上げる「Part II (On the Run)」。
こちらもゴージャスでノリが良くて最高です。

　　この他にも，センセーショナルなホーンセクションでじわじわと盛り上がっていく「Oceans」，お洒落なピアノにファンキーなホーンをループするなどジャジーなサウンドの「Somewhereinamerica」，重厚感のあるシンセ・サウンドに，扇動的なラップが絡む「Crown」などがお薦め。
「BBC」では，「億万長者，少年から・・・」なんて日本語も飛び出します。

　ただ，楽曲的にはキャッチーなものは少なくて，この辺が一般受けするかと言うと，ちょっと評価が分かれそうです。
まぁ，純粋なHip-Hopファンからすると，キャッチーなサウンドなんて論外なのかもしれませんが。