かもめはかもめ？　蛙の子は蛙？

1980年年末公開の第26作、

シリーズ折り返し点を過ぎて傑作・佳作が連続する時期のひとつ、

本作は詩情・旅情・哀切、
そして意地と沽券と笑いが渾然一体化した傑作だと思う、

前半の道南・奥尻の絶景とラスト・シーンはぜひリマスター効果のある本ディスクで楽しみたいもの、


本作で結婚から10年、
遂にさくら夫婦は念願の一戸建てを購入する、

マドンナとの年齢差が開く一方の寅次郎の対女性感は恋愛と保護感情を両極端に揺れ始めるが、
ここではまだ恋愛感情が勝った演出だ、

最後期ほどではないが、
ラストシーンの爽やかさはシリーズ中期らしい芸達者な演出だ、


調べてみると渡辺真知子の「かもめが翔んだ日」も研ナオコの「かもめはかもめ」も1978年のヒット曲である、

つまり本作のアイデア段階ではかもめを歌ったヒット曲が連続していたことになる、

面白いもので何か当時の文化風俗上のイメージがかもめに象徴されていると大げさには表現できるわけだ、

本作の観光映画上の最大の見所は渡島江差から奥尻島の描写だが、
オオセグロカモメが向かい風に逆らって必死に飛翔する長いカットが採用されている、

本シリーズにはとても珍しい長い自然描写が伊藤蘭演じるマドンナすみれの逆境を暗示している面白さを感じる、