立宗700年祭を軸に、戸田と弟子たちの奮闘が描かれます。昔も今も変わらぬ日蓮正宗の体質が垣間見えて興味深い。

本書は、
1952年(昭和27年)4月から年末にかけての、
戸田城聖を中心とした創価学会の歴史が綴られています。


戦時中、
日蓮正宗僧侶の笠原一派は、
軍部と結託して日蓮正宗を乗っ取りを画策。
これが創価教育学会幹部21名の逮捕、
牧口会長の獄死につながります。

日蓮が初めて「南無妙法蓮華経」を唱えて(立宗宣言)から700年の「立宗700年祭」で、
創価学会青年部が笠原を詰問し、
戦時中の行いの数々や笠原の主張する思想の誤りを反省させて「詫び状」を書かせますが、
そのことが思わぬ問題を引き起こしていく様子が描かれていきます。


本書を一読すると、
1952年当時も今も、
多くの日蓮正宗僧侶が抱える思考パターンはほとんど変わっていないことに気づきます。

悪僧を退治したことを賞するのではなく、
むしろ700年祭という行事を乱したことがたいへんな問題だという「行事中心主義」、

僧侶が信徒より上であると当然のように差別し、
「信徒は黙って行事に参加すればよい。
いらんことをするな」と、
信徒の分際で僧侶を吊るし上げた行為そのものを許さない「僧侶中心主義」、

信徒(本書の場合は戸田)に厳しい裁定をくだし、
身内の僧侶(本書の場合は笠原)に甘い裁定をくだす「身内偏重主義」、

厳しい裁定の結末は、
いつも「大石寺への登山停止処分」であること、
などなど。
私は、
これら僧侶たちの転倒した価値観に、
大きな違和感を感じました。


この図式は、
1943年(昭和18年)の牧口と戸田への日蓮正宗の対応とも酷似しているように思います。

このとき日蓮正宗は、
牧口と戸田が逮捕されるや彼らを登山停止処分にして、
自分たちに逮捕の手が及ばないようにトカゲのしっぽ切りを断行しました。


本書には、
戸田に厳しい裁定をくだした僧侶たちに、
青年部員たちが話し合いに行く場面が描かれますが、
「昨日今日から信心をはじめた創価学会員に何がわかるか」「日蓮の信仰を守ってきたのは我々だ」という態度をとる僧侶が多数であることが、
本書のそこかしこから読み取れます。