汎用人工知能の具体的な作り方を述べた良質の科学書

本書は非常によく書かれた本です。
一読してカーツワイルの学識には感心します。
カーツワイルの他の本は確かに夢があり壮大ですが、
現実的に可能なことと夢のような話がごっちゃになっています。
批判的な人はカーツワイルの話は一種の宗教だとまでいいます。
その点、
本書は非常に堅実です。
カーツワイルは汎用人工知能を作ろうとしていますが、
その処方箋が述べられています。
カーツワイルの基本的な考えは、
汎用人工知能は大脳新皮質のアルゴリズムを模倣するのがよいというものです。
そのアルゴリズムはカーツワイルによれば、
階層的隠れマルコフ過程論で、
これはカーツワイルが音声認識の研究で用いた手法です。
カーツワイルを宗教家に例えるのは適当でなく、
十分な科学技術的素養を備えた未来学者、
啓蒙家です。
カーツワイルがグーグルで現在やろうとしていることは、
自然言語処理であることが容易に想像できます。
階層的隠れマルコフ理論が新皮質のアルゴリズムであるかどうかには異論がありますが、
すくなくとも現在大流行の深層学習理論ではありません。