一生かかって名句を一句

他の本を読んでいてこの本の存在を知り、
購入。
名著だった。
簡潔で行動的な文体が
俳人そのものであり、
ぐいぐい惹きこまれる。


氏は「自分の俳句を作る」ことを心がけよと言う。
そして、
その基盤として、
俳句を
俳句たらしめている三要素である、
「１　五・七・五という型、
２　季語の連想力、

３　切字の効果」を強調する。


この本の特長は、
たえず実践を求めることにある。
たとえば、
各章の終わりに「今週
の暗誦句」を四句ずつのせ、
それを覚えなければ次に進ませてもらえない。
しかし、

言われた通り俳句を覚えようとすると自ずと作品の意味を理解することになり、
情景
も思い浮かべられる。


さらに、
本全体を通して四つの型をマスターさせようとする。
こちらも型に合わせて
実作しないと先へ進めない構成になっているが、
作ってみると読むだけではわからな
いことが実感としてわかる。
ちなみに氏は、
「俳句は一千句ぐらい作ると、
どうやら
身についた感じになる」と言い、
俳句トレーニングとして、
１ヵ月三十句作ることを
勧める。


それ以外、
有益なアドバイスとしては、


「季語の使い方如何が、
一句の成否の五〇パーセント以上を左右する」
「最初に買った歳時記は、
早くボロボロにしてしまえ」
「一句を作ろうとするとき、
まず『どこで切るか』を考えて形をととのえるようにする」
「名所・旧蹟などよりも、
近くの林や湖沼、
丘、
海岸、
川などの平凡な場所に、
吟行地を
　作っておく」
「俳句は一息の詩」であり、
「『今』を『点』でとらえて詠む」

などがあった。


俳句は短時日でうまくなろうなどと考えず、
「一生かかって名句を一句作るための地盤を
固める」くらいの気持ちで臨めとのことである。
この本を読み返すことで、
トレーニング
を続けたい。