答えを提示しない良書

VC業界にいたことがあるので、
今のCVCの盛り上がりは"deja vu”的な印象を持ちつつも、
ベンチャー投資の量と質を上げていくきっかけになりそうだと期待している。
そして、
その盛り上がりと共に、
本や記事も良く見かけるようになったけれど、
エキサイティングではなかった。
既に知っている情報と「How to」を提供しているだけ、
と感じたからだ。


この本も、
舞台はアメリカであるけれど、
同様な「How to」ものであるかと想像していたが、
素晴らしい意味で裏切られた。
ニューヨークとサンフランシスコに拠点を置くVCのGPによる、
50人以上ものCVC当事者（元含む）へのインタビューが中心をなす。
そして、
各々のCVCのGP達がどのように試行錯誤して自分達なりに「うまくいくやり方」を見つけたかが明らかになる。
そして、
それら「うまくいくやり方」は多種多様だ。
もちろん、
最終ゴールの明確化とそれへのコミット、
戦略的リターンと財務的リターンの両方をある程度得る必要があること等、
当たり前のことは共通するが。


この本の素晴らしいところは、
各CVCの「うまくいったやり方」から成功ルールを単純に導き出していないこと。
各GPがどのように考えて行動したのか、
それを提示することで、
読者が自分で考えられるようになっている点である。
どんなものにも正解はない。
自分の属する組織にとって最良と思われることが何なのか考え抜いて思考錯誤しながら形にしていくことが、
謂わばたった一つの「成功のルール」であり、
この本は、
その考えるきっかけを提供している極めて知的な本なのである。