演技でも魅せるサイコ=サスペンスのド定番

いつものモーガン･フリーマンが定年間近のベテラン刑事、
いつものブラッド･ピットが自信過剰な若手補充刑事、
いつものケビン･スペイシーが知能優秀な猟奇殺人犯を演じるサイコ=サスペンス。

デイビット･フィンチャー監督がこのド定番の役どころを駆使した作品なので安心安全な映画だが、
中でもピットの危なっかしい若者の熱演はその後の彼のポジションを決定付けた。
それほどに序盤の軽薄さと中盤の怒りと終盤の急展開での演技はなかなか印象的だ。

ストーリーは、
七つの大罪を模した連続殺人犯を追い掛ける展開自体に驚きはないが、
追い掛ける立場の“普通”の刑事が、
本来は追われる立場の“異状”なサイコ犯に狙われ翻弄されるカタルシスが際立っている。
また、
デトロイト市街の寂れた建物、
格差に呑み込まれた無秩序さが二人の刑事の捜査や生活を脅かす。
その環境の重苦しさこそが本作の主題、
｢人間の表裏、
正常と狂気を別つ紙一重｣のテーマ性を見事に引き立てている。

脚本やカメラワーク、
役者の演技がシッカリしているので、
一度観て結果を知ってからも楽しめる、
そんなスルメの様な味わいの珍しいサイコ物の傑作です。

Blu-rayの画質はまずまず良いが、
コレクターズDVDの不気味なノート装丁が秀逸なのでやっぱり売れませんね。