フィクションと事実の融合は見事

歴史的事実とフィクションを上手く融合させているのは凄い。
改めて思うのはナポレオンがいまだに敵国から見ても、
凄まじい影響力を持った人間だったと言うことにつきる。
この巻で描かれるモスクワ攻防戦についても、
殆どロシアは負けているが、
極寒の寒さとナポレオン側の戦略性の甘さで救われている。
登場人物の貴族たちもナポレオンとの戦争に巻き込まれる形で権勢がかなり落ちてしまっている。
権力を操り、
馬鹿げた賭け事や遊びに呆けていた貴族たちや軍人がいかに権力闘争にかまけて、
弱かったかがよく解る。
その不安とアナーキズムが随所に含まれているところが素晴らしいが、
やや前半と比べると難しさが災いしていて、
間延びした印象を受けてしまう。
解説が無いと、
何が書いてあるのか理解が難しい。
その意味でも読む人を選ぶ本でもあるが、
読む価値があることは確かである。