真剣勝負

本書には、
”花”の川瀬敏郎、
”陶芸”の加藤静充、
”織物”の田島隆夫、

”骨董”の柳孝等々、
生前の白洲正子と関わった人々が寄せた思い出の
数々とともに、
正子自身が彼ら一人一人を語った印象記が交互に並んでいる。

関連の写真も適切であり、
彼女の他の著書では知ることのできない
真の素顔が感じられてくる。
それもお互い、
単なる賛辞に終わっていない
ところがよい。
”歯に衣を着せぬ”もの言いは、
確かに相手の胸をつらぬいたかもしれ
ないが、
同時に彼女自身をも傷つけたに違いない。
殊に、
川瀬氏に送った
手紙の件はそのことを思わせる。
”美”を追求するための、
人と人との本当
の付き合いというものは、
常に諸々の妥協を許さぬ真剣勝負なのであろう。