タイトル以上に内容は学術的

本書は著者は異なるが、
同社の同じシリーズ『働かないアリに意義がある』の姉妹本と呼んでもよく、
興味深くかつ平易ながらも科学実証的な考察となっている。
Kindle 版には著者略歴は記されていないが、
その内容・筆致からして生物学者であろうと推察される。
前掲書同様に、
多くの学術論文や自身の研究観察を土台として、
進化論、
特に「性選択」の「異性間選択」と「同性内選択」、
「ランナウェイ」、
「チェイスアウェイ」、
「性的対立」などの観察・考察を昆虫類を中心に展開する。


かかる昆虫類の生殖・配偶行動の細部を詳細に観察分析し、
それらにおける「性選択」や「性的対立」（コストのトレードオフ関係）から、
各生物に如何なる進化（変異）をもたらすのか、
など多面的な分析が読み手を飽きさせない。
「性的対立」に関しては、
オスがメスの他のオスとの交尾を防止するようないくつかの形態、
通常は派手な姿態のオスがメスに求愛するのに対し（異性間選択）、
逆にメスが大型化または目立つ姿態となってオスに選択される例などを挙げるなど、
実例としても興味深い報告が多い。
ただ、
読みやすくあるいは身近な構成を配慮志向したためか、
交尾やマウントと言わず昆虫類を擬人化して「セックス」で統一しているので、
読む場所を選ぶかもしれない。