静かに、力強く訴えかけるものがある…

これは、
南アフリカの“アパルトヘイト”を扱った作品である。
70年代後半の実話に依拠したもので、
“アパルトヘイト”の廃止を巡って南アフリカが揺れていた時期の作品だけに、
非常に話題になっていた記憶がある。
人間の尊厳を否定するかのような政策に対する憤りのようなものが全編を貫いてはいるが、
そうした“主張”を前面に押し出した印象の作品ではないと感じた。
ある国で不正義が罷り通り、
渦中の人々がどう生きようとしたのか、
劇中に登場した人々の中で互いに理解を深める様や、
サスペンス物風な決死の脱出劇を通じて自然に観る者に訴える作品になっている。

映画の終わりの字幕で、
ドナルドと家族が国外に無事に脱出し、
スティーブのことを伝える『ビコ』という本が出版され、
この映画でも劇中のドナルドのモデルになっているウッズ氏が協力していることが伝えられている。
物語の舞台となった南アフリカでは、
“アパルトヘイト”が撤廃された。
南アフリカは新たに発展しようとする国になっている。
他方、
世界には未だ不正義が罷り通っているような国や地域もあるのかもしれない。
が、
どんな所にもこの作品のスティーブのように何にも屈せずに正論を吐き続けようとする人達や、
それに共鳴するドナルドのような人達が居るのだと思う。
年の瀬に観る型となった本作だが、
色々と考えさせられた…