とても興味深く読みました

作者は、
昭和15年ごろ郷里の蒲郡市近郊の里山でイヌ科の奇妙な獣と出会い、
以来そのことが気になり、
また近年になってその不思議な動物の消息を訪ねて、
三河各地を歩かれた方です。

昭和19年に、
同じ里山で見つけた糞のことに言及してられますが、
「狐の糞ほど黒くなく、
形も丸かった。
一メートルくらいに顔を近づけると、
何ともいえない良い香りが漂っていた。
不審に思いながら少しずつ鼻を近づけていくと、
香りはますます強くなった。
・・・香りは樟脳に似ているが、
どちらかというと菊の花の香りに近かった。
」（p.134）とあります。
斐太猪之助氏の「オオカミ追跡18年」に、
大峰山中で発見したオオカミと思われる糞について、
「柔らかい螺旋状のものを半分、
鼻先へ持ってきて嗅いだ。
山の野菊で、
竜脳菊という美香のものがあるが、
ちょうど、
あれに似た匂いで、
樟脳のように揮発性に富んだ、
しかも、
しつこく、
いつまでも匂う。
」（p.48）とあります。

おそらく、
この本の作者も同じ動物と出会ってられたのでしょう。

二ホンオオカミと思われる生き物が、
深山奥深くに棲息していたのではなく、
どちらかというと人間の生活圏のすぐ隣で生活していたという点に、
特に興味を感じました。