「国家のヒステリー」と「反作用」

　『わたしは1918年に慶尚南道の山村で生まれた在日韓国人である。

7歳の時に渡日して以来、
ずっと日本に住んでいる。

わたしは20歳前後の頃に、
朝鮮独立運動に血を燃やし、

治安維持法違反者として2年半の獄中生活を強いられた。
…』（本書より）

　沖縄支配の経験に基づくとされる朝鮮総督府の「土地調査事業」という
露骨な土地収奪政策は北部地方者は満州へ、
南部地方者は日本へと流れる
流浪生活の発端となった。


　当時の日本は第一次世界大戦の軍需景気による工業発展、

関東大震災による災害復興のため、
低賃金の肉体労働者を必要としており、

政情不安から端を発する現代の「難民・移民問題」の背景と重複する。


　また本書には1927年『労働者』第9号の
大正末期～昭和初期の状況を解説した一部論文を挙げているが、

『渡日労働者数が非常に増大…数月間に2万5千余人に達した…』
『言語の不通、
感情の相違は民族的差別を一層強烈に誘起する…』とあり、

すでに外国人恐怖症、
レイシズム等の萌芽を指摘している。


　海の向こうでも同様の事象が起こっている。


　1923年8月に発行された白人至上主義結社、
クー・クラックス・クランの会報には
『カリフォルニア州には合衆国全土の2/3に相当する日本人が暮らし、

その数はおよそ10万人以上でかれらは州内の農場の1/8を手中に収めている』と
かきたてて、
『何らかの手を打たねばならない』と強く警告している。

（平凡社新書『クー・クラックス・クラン』浜本隆三）
結果、
1924年にいわゆる「排日移民法」が米国で制定され、

米国から日本人は「望ましくない」人々とされ、
移民は制限されている。


　同時多発的に起こった「モラル・パニック
（大勢の人々の間に広がる恐怖心によって社会の安寧が脅かされている状態）」
ともいえる状態の中で、

日本の場合、
自国民の社会主義運動のみならず、

他民族による民族運動、
独立運動の地下活動は