想像力をかき立てる力作

　史実においては必ずしも評価の高くない戦艦「扶桑」。
その特徴的な艦容から、
近年の模型業界では脚光を浴びる存在になっています。

　本書はそんな扶桑を細部にわたって描写していて、
模型用資料に留まらず、
ある種の美術書と呼んで差支えない書籍に仕上がっています。

　
「戦艦」と聞いて誰もが注目する主砲、
副砲、
高角砲といった兵器類から、
通風筒、
手摺、
はては甲板上の排水孔まで。
兵器として、
また人の生活する構造物として当然あるべき、
しかし写真や文献では読み取れないディテールが、
圧倒的な密度で描き込まれています。
読み進めるごとに、
間違いさがしの如く食い入るようにページを見つめる自分に気付くことになるでしょう。
そこに感じられるのは、
戦記における不遇な印象を越えた、
長きにわたって多くの乗員たちと共にあった巨艦としての「扶桑」の姿です。

　書籍としては高額な部類に入りますが、
間違いなく価格以上の満足を与えてくれるでしょう。