信心深い妻エマへの愛と科学と間で悩んだダーウィンの人間らしさ

チャールズ・ダーウィンは科学者の典型で何事にも論理的なアプローチする癖があり、
結婚についても、
メリットとデメリットを箇条書きにしたリストを作った。

結婚しないメリットの例は”Freedom to go where one liked”で、
ビーグル号のような冒険を諦められない気持ちがうかがわれる。
これは現代の男性にも 通じるリストだが、
尊大さの現れではなくこんなところにまで論理的思考だった彼のエピソードとして微笑ましい。


チャールズとエマは 仲が良い従兄妹同士だったが、
論理的思考でエマと結婚するという結論に達するまでチャールズは彼女と結婚することは考えていなかった。
いったん決意してからプロポーズに至るまでの彼の悩みとプロポーズでの２人の反応が傑作だ。
つい吹き出す場面なのでぜひ読んでいただきたい。
ウエッジウッド創業者の孫であるエマは女性としては当時稀な読書家で、
チャールズはエマの才能を尊敬し、
著作が完成するたびに必ず意見を求めたという。
歴史を塗りかえた科学者が意見をこれほど重視したことからもエマの知性と二人の絆がうかがわれる。
また、
「種の起原」の出版に関するチャールズの葛藤にはエマの信仰心が大きな部分を占めている。
教義を否定するような「種の起原」を出版するにあたってのチャールズとエマ、
それぞれの葛藤と愛に基づいた行動は、
男女どちらからみても羨ましいものであろう。


児童書とはいえ読み応えある内容でしかも読了しやすいページ数なので、
日本人の大人におすすめのノンフィクションである。

プリンツ賞受賞　米国図書館協会ヤングアダルトノンフィクション部門受賞　全米図書賞最終候補