事典的な使い方にも有用

本著は、
日本の思想を『日本という場で起きた異文化や異なる思想伝統の選択と受容、
そして深化の堆積』という視点から眺め、
各時代に重要な人物の思想を簡潔かつ的確に紹介しています。

一通り眺めて思想の変遷を把握して、
興味が湧いた箇所をさらに他の書籍で深く掘り下げていくといった事典的な使い方にも有用です。
巻末には人名索引と事項索引が付属されていて便利です。


日本の思想としては以前から、
鎌倉仏教、
禅宗、
国学、
鈴木大拙氏、
西田幾多郎氏あたりには興味を持っておりましたが、
本著を読んでさらに再発見してみたくなったのは、
儒学的教養をベースにして科学的、
理性的な思考を展開していった山片蟠桃氏と、
「自然世」という理想社会を想定した安藤昌益氏でした。

前者は、
雑多な情報が氾濫しているこの情報社会に翻弄されてしまわぬよう、
後者は、
貧富の差が拡大し二極分化しているこの格差社会に対して見直すべきものがあるように思いました。


新書でボリュームがありますが、
値段以上の価値のある著作だと思います。